はじめに

家賃収入と売却益の両取りができても「失敗」だった理由

――まさに「両取り」ですね。

ただ、560万円で売ったのは大きな「失敗」でした。

――どうしてですか。

僕が購入したのは5階の部屋で、建物の1階は事務所として使われていたのです。ただ、その事務所が怪しい雰囲気で……

――怪しい雰囲気、とは……

家の前には黒塗りの外国車が止まっているのですが、窓はみな黒いフィルムがびっしり貼られていたり。夜になるとたくさんの女性が事務所に入ってきて、朝にはまた出て行ったり。さらに、いつの間にかドーベルマンや土佐犬が飼われ始めて、門番のように玄関前にいたり……。いろいろなリスクを感じて、急いで売ったのです。

――それが560万円だったわけですね。

はい。ただ、この建物は良い意味で化けました。売却後、1階は事務所からチェーンの学習塾に変わり、建物も綺麗に。今、同じ間取り(45平米)の部屋の価格を見たら、1,490万円です。自分が得られたかもしれない利益、「逸失利益」を考えたら大失敗ですよね(笑)

――とはいえ、1階の状況から仕方なかった気もしますが。

僕が持っていたのは5階であり、冷静に見れば余り影響がありません。当時の自分が臆病だったと思います(笑)。とはいえ、この物件の経験は僕にさらなる必勝法を授けてくれました。それが「ファミリータイプ大化け戦法」です。

「家賃100倍の法則」で見ると、東京・神奈川は物件が高い

――名前を聞いただけで気になります(笑)

45平米以上のファミリータイプの物件が“化ける”ということです。ただし、都心から30分圏内のエリアに限ります。なぜなら、このエリアはサラリーマンがマイホームを探すエリアだからです。

マイホームを買う際、多くの人は35年ローンを組みますよね。今は1%以下の低金利で、かつ(条件をクリアすれば)住宅ローン減税が適用されます。つまり、ほぼ金利なしでローンを組める。すると、3,000万円ほどの物件でも、35年ローンなら月7~8万円の返済で済みます。決して高くないですよね。つまり、価格は3,000万円ですが、月の返済額にすると安く見える。結果、ローンで買うファミリータイプの物件は値段が上がりやすいんです。

――それが大化け戦法だと。

はい。住宅ローンを組む人は、月の返済額を基準に物件が高いか安いかを見ます。でも僕たち不動産投資家は、投資物件としての総額を見ている。そのギャップが重要なんですね。

――なるほど。

さらにこれ以降は、物件のエリアも変えました。これまで神奈川ばかりで購入していましたが、次第に埼玉や千葉に移っていったんです。実はこれも、不動産投資のセオリーに近く、多くの人はまず東京や神奈川など、人気の地域で物件を探します。少子高齢化の時代において、安定しているのは東京だと。ただ、東京は物件価格が高くて、利回りが出にくい。神奈川も、東京よりは安いものの、やはり満足のいく利回りは出にくいです。

図面での解説

――確かに、最初は東京や神奈川を狙ってしまいそうです。

僕は、1,000万円の物件なら月10万円の家賃を、2,000万円の物件なら月20万円の家賃を、3,000万円なら家賃30万円を取るべきだと思っています。これを「家賃100倍の法則」または「価格100分の1の法則」と呼んでいるのですが(笑)。1,000万円の物件を見たら、家賃を10万円取れるか想像する。逆に、家賃10万円になりそうな物件を1,000万円まで値切って購入できるか考える。

その視点で見ると、東京や神奈川の物件は価格が割高なのです。そもそも物件価格と家賃の性質を比べると、物件価格はどんどん上がるのに対し、家賃はあるラインで頭打ちになり始めます。つまり、価格が3,000万円、4,000万円と上がっても、家賃は30万円、40万円と上がりにくい。たとえば六本木ヒルズで45平米の部屋があったら、1億円ほどの価格になるでしょう。でも家賃100万円は取りにくいのです。せいぜい50万円程度。

――なるほど、価格の上昇に対し、家賃は頭打ちになると。

はい。ですので、家賃100倍の法則を基準にすると、東京や神奈川は物件価格が割高なのですね。このことから、埼玉、千葉で物件を購入していったのです。

束田さんのさらなる不動産投資の足跡、そして必勝法は次回に続きます。


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