はじめに
第5世代移動通信システム「5G」は、これまでの4Gと比べて約100倍の速度で通信が可能になり、なおかつ低遅延である高速通信です。高画質の動画配信や大多数の同時接続などが可能となるほか、ビジネスの分野でも遠隔医療や自動運転などに活用されることが期待されています。
この5Gを活用した商用サービスは、今年3月25日のNTTドコモを皮切りにKDDI、ソフトバンクが相次いでスタートさせています。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の中、思惑通りにいかないことが多々あるようです。各社の5G戦略を解説します。
コロナ禍における各キャリアの対応
3月末といえば、新型コロナウイルスの感染拡大が確認され始めたころです。4月7日には国内で緊急事態宣言が発令されたこともあり、各キャリアはショップや量販店での営業自粛を余儀なくされました。
対面でのセールスが困難であったことから、5Gサービスの契約獲得のハードルが高くなってしまい、契約数が想定ほど伸びなかったようです。一言で表すなら、「タイミングが悪かった」とも言えますが、出だしでつまずいてしまったため、今後の普及に関して懐疑的な声も聞こえてきます。
総務省は基地局整備の前倒しを計画
一方、総務省は5G利用によるICTインフラをできる限り早期に全国展開するため、5G通信網の前倒しでの整備を各事業者に求めています。
7月3日、ICTインフラを活用した地域課題の解決に向けて、5Gなどの携帯電話基地局や光ファイバなどの整備方針を示した「ICTインフラ地域展開マスタープラン」を改定。4G用周波数の5G化や、5G投資促進税制の導入などにより、2023年度末時点の5G基地局整備数目標を、当初8.4万局以上としていたところ、21万局以上に引き上げています。
背景には、持続可能な地域社会の実現に向けて地方への早期展開を促進するがあります。なにより、新型コロナウイルスの感染拡大防止という観点から、「遠隔授業」や「オンライン会議」などの新しい生活様式を支える、高速・大容量通信に対応したICTインフラ整備がますます急務となっていることがあるようです。