はじめに
成功するディーラーは非情に振る舞う
そして往々にして、ここまで酷いと思わなかったとして見切ったところが底値となってしまうということが起きます。現実に目をつぶり、「これは良い銘柄だから」とか「人気のある経営者だから」と思い込まず、ドライに考えて見切るということが必要です。
株式の売買を職業としている証券会社のディーラーの中でも、本当に優秀で利益を出しているのは、いい意味でドライな人が多いです。朝令暮改を平気で行えないと優秀なディーラーにはなり得ません。
また、そうした人は自分に対しても冷静です。例えば、「良い銘柄だから100円以下に株価が下落することはない」と思っていても、いざ100円を割り込んだ場合、優秀なディーラーはあっさりと売ってしまいます。対して、失敗するディーラーは「こんないい銘柄が100円を割り込むことはおかしい!」として持ち続け、結局50円以下になってしまうということもあるのです。
そこは非情になり、「好きな銘柄だけど悪い数字が出たから」ということであっさりと見切ることが必要です。筆者も昔、思い込みで大きな失敗をしたことがあります。
NTT株での大きな失敗
NTT(9432)が上場した時の話ですが、上場前の売り出し(公募)価格が119万7千円で、上場時に160万円からはじまってドンドン上昇が続きました。こうなると、よくある話なのですが、当初は「200万円くらいが高値だろう」とか考えていても、いざ200万円を超えると、「さあ300万円だ」となりました。
「300万円くらいがいいところだろう」と考えていました。でも、何度も買っても上昇するものだから、「下がらないということは、いい銘柄だから一生ついて行く」と思い込んでしまい、300万円を超えても買い続けてしまったのです。
その後、318万円をつけてついに下がり始めても、「良い銘柄だから」という理由で300万円を割り込んでも売れず、逆に買い増す始末でした。結局、200万円も割り込んで、大きな損失を抱えたままに売るに売れずという状況になってしまったのです。
市場は古今東西同じ
「株式と結婚するな」という格言通り、あっさりと見切っていれば、こうはならなかったと大反省しました。相場格言というのは、江戸時代の米相場の時代から続いているものなどもあります。また、米国の格言でも日本と同じようなものが見られます。古今東西、相場というものは同じであり、これらの格言は今でも十分通用するものも多いです。
もちろん、相場は常に変化しているので、相場格言の解釈も変化が必要です。しかし、「株式と結婚するな」という言葉は、相場では常に冷静で客観的でなければいけないということの戒めとして、覚えておけば失敗も少なくなると思います。