はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

高齢出産のため、主人の定年後に子供2人の教育費がピークとなります。現在、家計は私がすべて握っており、そのためか主人はいまいち危機感を感じていないようです。主人は決して浪費家ではないのですが、お金には無頓着なほうです。もう少し、お金の運用等にも興味をもち、将来を考えて欲しいです。今後のライフプランの相談とともに、主人に今後のライフプランを考えてもらうよい方法や節約のアイデア、夫婦の今後を見直すためのよいきっかけとなる方法について教えていただきたいです。

【家族構成】
主人53歳、私47歳、子供11歳、8歳の女子2人

【現在の収入】
主人:年収手取り650万円、55歳から減給あり。65歳まで再雇用予定。
私:年収手取り350万円、零細企業のためボーナス等は不安定。定年まで働く予定。
年間貯蓄額:300~400万円

【金融資産】
現金・国債:2,500万円
株・投資:2,000万円
養老保険:1,800万円
退職金:主人1,500万円、私160万円(確定拠出年金)
住宅ローンなし、車あり(ローンなし)

家計的には、私の収入をそのまま貯蓄にまわしている状態です。その結果、平均月30万円を貯蓄できてはいますが、これから収入が下がってくるので、難しくなりそうです。そのため、以下のようなことを考えています。

・夏休みに年間約50万円かけて毎年旅行していたため、家族旅行のレベルを下げる
・習い事が多く、教育費のバランスが高いため子供の習い事の吟味
・外食など節約の徹底・株主優待の有効活用
・高校までは公立、国立(高校は私立になることも想定)
・大学文系、自宅通いの予定
(40代後半 既婚・子供2人 女性)


野瀬: 最近は共働きの方が多いので、同じようなご相談は多いです。

私も今38歳で子供はいませんが、もし今子供ができた場合、子供が20歳のときに当然私は還暦手前になるので、健康に気をつけなければと考えるでしょう。なぜなら、自営業の私は健康にさえ気をつければ、老体に鞭打って働けばよいからです。

しかし、お勤めの方は定年がありますので、それゆえ「定年後の養育費」というのは、現役世代で不安に思っている方が多い事項のひとつかもしれません。

大切なのは「家族の幸せ」にお金を使うこと

さて、質問者の現状を分析しましょう。まずは収入支出面です。

現在、世帯合算の手取り収入が1,000万円ということですので、世間一般より恵まれているといえます。

貯金額から逆算するに、生活費は年間650万円ぐらいでしょうか。こちらも世間一般からみれば、かなり高いほうだと思いますが、たくさんの習い事をお子さんにさせておられるなどの事情もあるので、仕方ない部分もあると思います。

このあたりは後でお話します。

一方の貯蓄面ですが、こちらもかなり手厚いですね。おそらく持ち家でないこととご年齢が理由だとは思いますが、預金、国債、株などをすべて合わせると現時点で6,000万円超の金融資産があります。これは大きな武器になりそうです。

また、貯金と保険と投資のバランスも年齢を考えると悪くないです。これから定年を迎える段階で、ローンがまったくないのも素晴らしいです。

まとめますと、収入・資産ともに良好です。もちろん年齢を考えると、通常良好であるべきですし、特に支出に関しては改善の余地はあるとは思うのですが、そもそも家計においては「すべての家庭がこうするべき」という絶対的なルールはありません。

最悪、家計のキャッシュ・フローが破たんさえしなければ、各々の家庭の環境・嗜好・老後の過ごし方などを総合的に考慮し判断するべきです。つまり、「本人と家族が心の底から幸せだと思っているもの」に、お金が使えているかどうかが大切なのです。

習い事も旅行も必要ならお金をかける

さて、まずその「家計の破たん」が起こるかという点ですが、85歳までシミュレーションしても、質問者のご家庭の家計が破たんする兆候はありません。理由は、現時点での金融資産が多いこと、また、定年は近いですがお二人とも正社員であり年金が手厚いことです。

確かに質問者のご懸念のように、お子さんが大学生の時期には、家計が年間100万円以上マイナスになる時期があります。しかし、過去の蓄積があるので、難なく乗り越えることができるでしょう。

老後資金に関しても、退職金を考慮すれば概ね8,000万円程度が確保されるうえに、年金もそこそこありますので、心配はないと思います。

結論として、家計が破たんする可能性が低い以上、無理をして大きな節約を行う必要はないと思います。特に、習い事や進学はお子さんの一生を左右する可能性がありますので、「お金だけ」を理由に決断することは避けたほうがいいでしょう。仮に「習い事の節約」をすることになったとしても、まずはお子さん自身に「本当にこれが好きかどうか」を問いかけるとよいかと思います。

その他、節約の可能性があるものとしては旅行でしょうか。ただ、確かに年間50万円以上は高いと思いますが、質問者とご主人の年齢を考えると致し方ないとも思います。若いころでしたら車で長時間移動して旅行に向かうのもよい思い出となるかもしれませんが、50歳前後になりますと体力的にそうもいきませんので、費用をかけてゆったり過ごすようなプランに変える方がよいでしょう。

よって、家計に関しては「現状維持を心がけたうえで、無理をしない程度に節約」というイメージを持ち、学費以外の理由でこれ以上家計を膨らませないというのが重要だと思います。

ライフプランは難しく考えないのがコツ

私も質問者のご主人のように、どちらかというとお金に関して無頓着な人間でした。おそらくご主人は、「生活費もちゃんと渡してるし、貯金も増えてるんだから問題ないじゃないか」と考えているのではないでしょうか。私もそう思っていたので、ご主人の気持ちはよく分かります(笑)。

ですが、そんな私も今はしっかりライフプランを考えています。なにがきっかけだったのかというと、それは「難しく考えないこと」を意識するようになったからです。

「ライフプラン」というと、毎日家計簿をつけたり、とにかく細かく考え、息がつまるようなイメージがあるのですが、実際はもっとざっくりしたものです。多少のズレも細かく考えず、とにかく「ざっくり」を意識するのがよいでしょう。

例えばですが、まずは100万円単位のざっくりライフプランをエクセルで奥様が作り、機会をみてご主人にお見せしてはどうでしょうか。そのうえで「結婚〇〇周年で〇〇に旅行に行きたいから、これくらいのお金がほしいよね」「そのためには毎月〇万円積立をしようか」という、前向きな話をしながら、雑談のような形で相談を始めるとよいと思います。

とにかく、「細かいものではなくざっくり」という点をアピールし、「息がつまる話ではなく、前向きな話」である点を強調するとよいでしょう。男性は傾向として、エクセルなどを使ってのシミュレーションや、投資の話が好きな人は多いです。うまくいけば「いやいや、俺はこう思う」という流れになると思います。

定年後は夫婦仲良くあることが重要

最後に定年後の夫婦の在り方についてです。私自身まだ38歳なので定年後の夫婦像について語ることはおこがましいのですが、私の周りの「幸せそうな老夫婦」をモデルに、少しお話したいと思います。

もちろん最低限の「お金」があることは条件なのですが、これが確保されている質問者のようなご夫婦の場合、あとはとにかく「仲良くあること」が重要です。1円単位までの細かい家計の話をご主人に何度もしたり、不安を訴えるような方法はあまりよろしくないでしょう。

先ほどのシミュレーションのところでもお話しましたが、「アレが足りない、コレが足りない」などと不安と不満をぶつけるのではなく、「こんなことがしたい」という提案の形にするべきです。

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