はじめに

課題(2) 介護サービスの多様化への対応

もう1つの課題は「介護サービス」の内容です。高齢者の1人暮らし、あるいは高齢者夫婦のみの世帯、認知症を患っている人の増加などによって、求められる介護サービスは多様化しています。

また、介護が必要となった場合、約4人に3人が「自宅で介護を受けたい」と希望しますが、認知症の人については、急激な環境変化は、その症状に良い影響を与えないこともわかってきました。

そのため、高齢者に必要なサービスを提供するためには、おおむね30分で行ける範囲内(日常生活圏域)に「介護」「医療」「予防」「住まい」「生活支援」の5つの要素が必要とされています。

こうした事情を鑑みて、2015年度から始まったのが「地域包括ケアシステム」です。要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしく暮らすことができるよう、先の5つの要素を一体的に提供する体制づくりが推進されています。2021年4月からは、法改正により、さらに取り組みを強化していくことになりました。

たとえば、上図のとおり、「生活支援・介護予防(いつまでも元気に暮らすために)」が老人クラブ・自治会・ボランティア・NPO等により提供されていますが、これらを支援しているのが、介護保険の地域支援事業です。

すでに、国民健康保険と後期高齢者医療制度により、疾病予防や重症化予防のために75歳以上の後期高齢者に対して健康相談、健診や保健指導が行なわれており、この地域支援事業に医療や保健事業の専門職が加われば、要支援・要介護の状態でない期間をより長くできるなどの効果も期待できます。

介護保険も地域格差の時代に…!?

介護保険は、市町村が保険者となって運営しています。先の地域包括ケアシステムの流れのなかで、医療や住まい、支援団体との調整など、介護を支える中心的役割を担っています。

その財源は、40歳以上の加入義務のある人たちからの保険料が全体の半分を占め、残りは公費、つまり税金でまかなわれています(国が25%、市町村と都道府県が12.5%ずつ負担)。

ただし、すでに述べたとおり、高齢者の人口、そのうち介護が必要な人と支える人の割合は、各地域によって異なります。重度の人が多く、介護サービスを使う割合が高い(たとえば、施設入所の利用率が高い)など、介護費用が多くかかる市町村では、当然ながら、利用者が負担する保険料も高くなります。

制度を財政的に破綻させることなく、持続可能な制度とするためには、各施策を充実させる一方で、保険給付の必要性や優先順位を考慮し、限られた財源の中で効率的にサービスを提供するしくみを考えていかなくてはなりません。そのうえで、市町村は、それぞれの地域の特性や実情、サービスの需要を考慮して、利用者にとって満足度の高い制度をつくり上げる必要があるのです。

介護される人も介護する人も、安全かつ安心できる老後を考えるとき、これからは地域格差をふまえて、「実力のある市町村」を選ぶことが当たり前になってくるでしょう。そして、お金・体力・心の限界を超える前に制度を上手に活用したいものです。

著者プロフィール:井戸 美枝(いど みえ)

CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。経済エッセイストとしても活動。「むずかしいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。著書に、『〈図解〉2021年度介護保険の改正 早わかりガイド』(日本実業出版社)ほか、『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる』(集英社)、『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『受給額が増える! 書き込み式得する年金ドリル』(宝島社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP社)などがある。

あなたの老後は大丈夫? 深刻化する「認認介護」井戸 美枝(いど みえ)日本実業出版社

あなたの老後は大丈夫? 深刻化する「認認介護

(この記事は日本実業出版社からの転載です)