はじめに
フィリピンでは海外出稼ぎ送金が急減
インドネシアと同様に、新型コロナウイルス禍のなかで景気悪化が目立つのが、フィリピンです。
フィリピンは、昨年まで概ね+6%前後の高成長を維持してきましたが、2020年4-6月期GDP成長率は、前年同期比16.5%減と、1981年の統計開始以来で最大の落ち込みとなりました。国内外で実施された活動制限措置の影響によって内需、外需ともに減少しており、景気を悪化させています。
また、フィリピンの民間消費に大きな影響を与えているのが、海外出稼ぎ労働者を含む在外フィリピン人からの送金です。しかし、新型コロナ禍のなかで、出稼ぎ在外フィリピン人の雇用、収入が失われるケースが増えており、送金額が大幅に減少しています。海外からの送金額は、本国で暮らす家族にとって重要な収入源となっていたため、送金額の減少によって国内消費を落ち込ませています。
東南アジア最多、30万人の感染者
9月28日には、ドゥテルテ大統領は、マニラ首都圏とその周辺州に敷いた部分的な外出・移動制限措置を10月31日まで1か月延長する、と発表しました。直近発表されている9月末時点のフィリピンの新型コロナウイルスの国内感染者数は、30万人強と、東南アジア最多となっており、政府はかなり警戒感を強めています。
マニラ首都圏は、GDPのうち、約4割が集中するフィリピン経済の中心地であるだけに、このたびの隔離措置延長の影響は大きなダメージです。インドネシアと同様に、フィリピンも当面景気低迷を余儀なくされると予想されます。
<文:市場情報部 副部長 明松真一郎>