はじめに

11月3日に米大統領選挙が実施されます。民主党は、2016年に共和党が勝利したミシガン、オハイオ、ウィスコンシンなどのいわゆるラストベルトや、トランプ大統領の在住地であるフロリダなどの接戦州でいずれも選挙戦を有利に進めており、賭けサイトではバイデン候補の勝利確率が70%を上回っています。

バイデン候補が勝利した場合、株式市場にはどのような影響があると考えられるのでしょうか。


民主党完全勝利がメインシナリオか

大統領選挙と同時に行われる議会選挙でも、民主党は上院こそ小幅な優勢にとどまっているものの、下院では過半数維持がほぼ確実です。大統領選挙、上下両院選挙のすべてで民主党が勝利するシナリオの可能性が最も高くなっています。

バイデン候補は中道寄りでトランプ大統領との討論会でも穏健な姿勢を示していたことから、株式市場は安定した動きを続けています。

また、すでに民主党が過半数を握っている下院は10月1日にインフラ投資に向けた地方政府支援や家計向け給付金を含む2.2兆ドルの歳出法案を可決しました。共和党が過半数を占める上院で可決される見込みはありませんが、株式市場では選挙後に民主党主導となった議会でさらに巨額の財政法案が可決され、株価を押し上げるとの期待も高まっています。

景気対策の株式市場への恩恵は限定的

しかし、民主党の完全勝利が株式市場にとって押し上げどころか大きな逆風になる可能性には警戒が必要です。

インフラ投資で恩恵を受けるのは地方の中小建設、不動産会社ですが、こうした企業のほとんどはそもそも上場していません。実体経済やGDPにはプラスになっても、上場企業の利益が増えなければ当然ですが株式市場にはプラスになりません。

家計向け給付金についても、4月に実施された際には新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出制限がかけられていたこともあり、比較的高所得なホワイトカラー層のオンライン株取引の盛り上がりが株価の上昇要因となりました。しかし、民主党政権下では給付対象の所得制限が厳格化される可能性が高く、株式需給の改善効果も限られそうです。

また、バイデン候補は景気対策の財源の一部とするため、21%の法人税率を28%に引き上げると表明しています。法人増税は企業利益を確実に減少させるため株価にダイレクトに影響を与えます。民主党の政策は同じ大型景気対策でも、法人税率の35%から21%への引き下げが中心となって株高を引き起こしたトランプ政権のものとは根本的に性質が異なります。

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