はじめに

「追われる側」になる

――どうしたんでしょうか……。何か値下げさせる材料を探すとか……?

違います。そのやり方では、たとえ材料を探しても、不動産会社さんがうまく言い訳を考えてしまうかもしれません。僕はこう言ったんです。「実は隣の部屋を310万円で買っています」と。そして「この物件には何の落ち度もありませんが、隣室を310万円で買っている立場として、400万円は払えません。なんとか310万円に近づけることはできませんか?」と言ったのです。

こう言われると、否定のしようがないと思いませんか?本人の心情や気持ちって否定できないのです。たとえば「朝が苦手」という人がいたとして、その気持ちは否定のしようがないですよね。

――確かに……。ただ「それなら売りません」と言われたらどうするんですか?

そのときは、あっさりあきらめます。価格交渉のポイントは、深追いしないこと。相手が難色を示したときに「そうですよね、失礼しました」と立ち去れるかどうか。決して相手を追ってはいけません。相手から追われる状態を作るのです。

――言っていることは分かりますが、せっかくいい物件に巡り会えたなら「もったいない」と思ってしまいそうです。

私がそこであきらめられるのは、「世の中に不動産はいくらでもある」と考えるからです。それなら、1つにこだわらず別を探せばいい。下手に高い金額で買うよりマシです。よっぽどの運命の出会いでない限り、割り切りでいいんですよ。その方がうまくいきます。

コロナ禍での購入エピソードは、次回も続きます。

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