はじめに
紹介した業者に責任は?
賃貸物件などでは不動産仲介業者に部屋の特徴を訪ね、説明を受けることが一般的です。なかには「音の静かな物件で」と条件をつける人もいることでしょう。
仲介業者から「静か」「遮音性の高い物件」と紹介されたにもかかわらず、住んでみるとうるさかったなんてことも、よくあると聞きます。その場合、仲介業者を訴えることはできないのでしょうか? 冨本弁護士に聞くと…
冨本弁護士:「『遮音性が高い』と説明して住居を販売しただけでは、詐欺等の犯罪に当たらないのが普通ですし、訴えるのも難しいと思います。『遮音性が高い』と説明されただけでは、どの程度の遮音性か明らかでありませんので、契約内容になっていないのと同じだからです。
契約の中で遮音性(透過損失・遮音性能等級)について一定数値以上といった形で相手方に保証してもらっていたのであれば、契約内容に適合しないということで、修理や代金の減額や契約の解除や損害の賠償を求めて訴えることもできると思います」
口頭ではなく、しっかり書面で遮音性の数値が提示されていない限り、「遮音性の高い物件」と説明され、仮に虚偽と感じたとしても、仲介業者を訴えることは現実的に難しいのですね。
悪いのは誰なの?
騒音を立てている人や紹介した仲介業者を訴えることができないということになると、騒音に困っている人間としては、「我慢できない自分が悪い」といわれている気分になってしまいます。
実際悪いのは、「我慢できない人」「仲介・販売業者」「管理会社」「騒音を立てている人間」のうち、誰なのでしょう。冨本弁護士に聞いてみました。
冨本弁護士:「一般的な住宅である程度の騒音があるのは仕方のないことです。騒音が紛争にまで発展してしまうのは、騒音の原因・程度、関係者の性格、交渉の経緯、解決のための関係者の努力等々によりケースバイケースであり、誰に責任があるとは一概に言えないと思います」
相談者を見つけて冷静な対応を
騒音問題に悩む人は意外と多いといわれます。我慢の限界に達しそうな場合は、一度怒りの感情を飲み込み、管理会社への連絡はもちろん、家族や弁護士に相談し、解決策を探っていきましょう。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)