はじめに

習慣3:理解できる対象、理由を言える対象に投資する

――具体的な投資対象はどうやって選ぶのがいいでしょうか。

自分が理解できて、投資する理由を明確にできるものに投資するのが鉄則です。成長が期待できるビジネスであるとか、経営者が素晴らしいとか、割安だとか、なんでもいいので投資する理由をシンプルに説明できることが必要です。

それができない投資対象だと、「よくわからないけど、上がりそう」といった漠然とした理由になってしまいがちです。それではギャンブルと同じで、たとえ成功してもまぐれ当たりに過ぎないので、そこからは何も学べません。

理解だけでなく、興味や関心のある分野を対象とするのもお勧めです。趣味や好きなもの、自分が働いている業界の近接領域などでもいいでしょう。関心が広がると理解できる対象も増えて投資できる対象が広がり、利益のチャンスも増えることになるので、さらに関心が広がるという良いサイクルが生まれます。

実は私は、「多趣味過ぎるファンドマネージャー」といわれるほど幅広い楽しみを持っているのですが、趣味そのものが楽しいのはもちろん、仲間の輪が広がるし、人脈が増えることで入ってくる情報や関心の対象もどんどん広がるのを実感しています。結果として利益のチャンスも広がるので、本当にいいことづくめです。

――視野や人脈を広げたり余暇を楽しむことが、結果として投資にも生きてくるのですね。

私は大学卒業後、司法試験を目指して働きながら勉強しようと、資産運用会社に就職しました。アルバイトよりも聞こえが良くて稼げそうという安直な理由でしたが、そこで毎日のようにさまざまな企業の社長の話を聞いたことで価値観が大きく変わりました。

たとえば、水道の蛇口の栓を作るメーカーでは、その栓の形によって水の出方はもちろん、水道代や水質、水の用途まで変えることができるそうです。その会社の社長さんは自らのビジネスに誇りを持ち、人々の生活や事業をより便利にする栓の開発に情熱を注いでいることがひしひしと伝わってきました。この社長に会うまでは水道の栓なんて気に留めたこともなかったけれど、そこにはさまざまな技術と関わる人たちのエネルギーが注がれているのです。

そう思って周囲を見渡せば、あらゆるものがそうであることに気づきます。私たちは人々のエネルギーと情熱が注がれたものに囲まれて生きていることがわかると、見える景色が変わってきます。世の中は実にカラフルで、前向きなエネルギーに満ちていると感じられるのです。

私は投資を、「未来のためにエネルギーを投入し、未来からお返しをもらうこと」と定義づけています。あらゆるモノやサービスは、誰かが「作っても売れないかもしれない」というリスクを負って、お金と時間、情熱と愛情を注いだ結果です。これは裏を返せば、リスクを取ってお金やエネルギーを投じる人がいなければ、新しい未来は生まれないということです。

私たちにはそれぞれ本業があるので他の会社の仕事を手伝うことはできませんが、リスクを取って応援したい企業にお金を投じることができます。これが投資の本質です。株式投資は対象となる企業が生み出す未来からお返しをもらうことであり、利益はそのお返しのひとつに過ぎません。そのほかにもその企業のおかげで生活が便利になったり、投資することで視野や知識が広がったり、ワクワクする気持ちになれたり、老後の生活に不安がなくなったりすることも、すべて投資のリターンなのです。

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