はじめに

新築マンションの値動きには注意

売行きが低迷すれば価格が下がるようにも思えます。しかし、新築マンションは、他の不動産や株などの資産とは、違う値動きをします。

経済学では需要と供給が一致する点を見出す主なメカニズムとして、価格調整と数量調整の2つを上げています。価格調整で需給を均衡させる場合、数量は動かず価格が動きます。一方、数量調整で需給を均衡させる場合、価格は動かず数量が動きます。

新築マンションの価格形成には、数量調整の面が非常に強く表れています。発売戸数の12カ月移動累計、初月契約率、新築マンションの価格推移をみながら確認してみましょう

まず、図表2で初月契約率の推移を見てみましょう。初月契約率とは、「マンションが発売したその月に、発売戸数の何パーセントが売却されたか」を表し、だいたい70%以上だと「売れ行きが良い」と言われています。

では、初月契約率が高ければ市況が良いといえるのでしょうか。確かにマンションの売り出し戸数は、初月契約率は60%から70%で推移している月が多くなっています。しかし、発売戸数は売行きに応じて適宜調整されています。すなわち、需要を見定めたうえで「売出した月に半分以上は売れる」と確信できる戸数しか販売されておらず、初月契約率は高くて当然であるはずなのです。

しかし、2018年12月は49%、2019年10月は43%と、コロナ禍以前から、既に売行きが低迷して初月に物件が売れないという月が発生していたのです。

2_初月契約率の推移

図表1と図表2を組み合わせた図表3で、新築マンション発売戸数12カ月移動累計の前年比と初月契約率の動向を比較してみましょう。発売戸数12カ月移動累計は2019年3月以降マイナスが続き、2019年10月以降は、前年比で1割以上の減少と大きく発売戸数が減少しています。2018年12月の初月契約率の大幅下落を見て、供給量を減らしているとみることができます。

3_12ヶ月移動累計(前年比)と初月契約率

一方で、図表4のとおり、平均価格は上昇傾向です。不動産経済研究所から公表される月次の平均価格は、その月に発売された新築マンションがどのようなエリアやグレードであるかの違いによって価格が上下し、その要素を除く必要があるため、12カ月移動平均で価格を見てみると、2019年後半から6,000万円を超え、6,500万円に近づきつつあります。

つまり、新築マンションの価格は、下がりにくく、現在も数量調整によって価格が維持されているといえます。

4_新築マンション価格の推移(12ヶ月移動平均)

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介