はじめに

先行きの景気はどうなるの?

それでは先行きの景気はどうなるのでしょうか。

1年後の景況感を現在と比べた指数は、3か月前の調査よりも若干改善しましたが、詳しくみると、「良くなる」と答えた人も「悪くなる」と答えた人も減少し、「変わらない」と答えた人が大幅に増加するなど、現在「悪い」と感じている景気の状況が今後も長く続くことを予想する人が増えていることがわかります。

特に、半年前に比べて約9割が「減った」と回答している「娯楽・レジャーの外出」については、このうち3分の1が今後さらに「減らす」と答えていて、「変えない」という回答と合計すると過半数の人たちがビフォーコロナの外出の程度まで戻すとは考えていないことがわかります。

こうした結果をみると、新型コロナ感染症はこれまで、私たちの生活様式を大きく変えていますが、先行きこの「新しい生活様式」が元に戻るのではなく定着していく可能性が高いことを示しています。

景気調査ザッピングでもっと深くわかること

この日銀の「生活意識に関するアンケート調査」を、内閣府の「景気ウォッチャー調査」と比べて「景気調査ザッピング」をしてみると、さらに多くのことがわかります。

「景気ウォッチャー調査」の9月の調査結果をみると、8月調査から5.4ポイント改善した49.3ポイントとなり、「良くなっている」と答えた人と「悪くなっている」と答えた人が殆ど同じ水準まで改善していることがわかります。

これは、リーマンショックを超える過去最低の7.9ポイントを記録した今年4月の調査から5か月連続の改善です。特に足元で大幅に改善しているのが「飲食関連」で働いている人たちで、改善の理由として「来客数の動き」をあげる人が増えています。

「景気ウォッチャー調査」では地域別の指数も公表されており、これをみると最も改善幅が大きかったのが沖縄で、最も改善幅が小さかったのが南関東となっています。やはり、新型コロナ感染症の新規発症が続いている首都圏の改善が遅れている一方、Go To トラベルなどで観光客が回復しつつある沖縄で、景気の下げ止まりの傾向が強いことがわかります。

全体としてみると、景気の最前線の人たちを対象とした内閣府の「景気ウォッチャー調査」では、4月に過去最高の落ち込みを記録したものの、観光客や来店客の回復を背景に急速に改善している一方で、一般の人たちを対象とした日銀の「生活意識に関するアンケート調査」では、改善の実感に乏しく、支出の減少などの生活様式の変化が先行きも続いていく可能性が高いことがわかります。

このように、複数の景気調査を比べる「景気調査ザッピング」をしてみると、足元の景気の状況がより詳しく、より深く理解でき、先行きの生活様式の変化や仕事の需要予測にも応用できるのではないでしょうか。

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