はじめに

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」

『鬼滅の刃』については、既に色々なところで報じられているのでご存知の方も多いと思いますが、大正時代を舞台に、鬼に家族を殺された主人公・竈門炭治郎が鬼になった妹を人間に戻すために剣の腕を磨き、鬼と戦うマンガで、週刊少年ジャンプで連載され、アニメになった後、10 月から映画が封切られて、今や社会現象とも呼ぶべき空前の大ヒットを記録しています。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」という言葉は、物語の第1話で、鬼になった妹を「どうか殺さないでください」と懇願して土下座する主人公・炭治郎に対して、鬼を斬ることを使命とした剣士である富岡義勇が言い放った言葉です。

まさにこれは、先行きに思い悩む地方銀行員の皆さんの心に響くのではないでしょうか。

それぞれの銀行の行く末は、金融庁や巨大金融グループが決めるわけではないのです。銀行の行員一人一人がどうなりたいか、そのために何をすべきかを自ら選び取っていくべきなのです。

「金融DX」や「フィンテック」の本質

金融庁は昨年から、「金融DX」という言葉を取り上げ、地銀が単なるデジタル化による業務効率化に止まらず、デジタル化されたデータを利活用してビジネスモデルを変革する取り組みを後押ししています。

その背景には、ここ数年進めてきた「フィンテック」や「共通価値の創造」の流れがあります。すなわち、「顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供」です。

「フィンテック」とは、単なる「金融とITの融合」のことを指すわけではありません。インターネットやスマートフォンを通じてクラウド上に蓄積されたデータを基に、AIによって分析して導かれたユーザーの属性や趣向に合わせて、真に「顧客本位の金融サービス」を提供する取り組みのことです。

そして、地銀にとっての「顧客」とは、その地域の中小企業や預金者、つまり「地域そのもの」にほかなりません。すなわち、地銀にとって進むべき道は、少子高齢化や過疎化、中小企業の活力の低下などで苦しむ地域に真摯に向き合って、「地域のために何ができるのかを当事者意識を持って突き詰め、行動すること」ではないでしょうか。

そして、一つとして同じ地域がないように、本当に地域のためにやるべきことはそれぞれの地銀によって異なります。生き延びるべき地銀とは、ただ単に統合によって経営体力を繋ぎ止めた銀行ではなく、「地域の特徴や課題に合わせて自らのビジネスを変革した唯一無二の銀行」なのではないでしょうか。

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