はじめに

問われるメディアの存在意義

ところで、事前の世論調査を覆して、トランプ大統領が歴史的な大接戦に持ち込んだことは、2016年と同様に世論調査があてにならないことを示しています。主要メディアの世論調査がトランプ支持者の意向をしっかりと反映しておらず「民主党寄り」になり易い、という4年前と状況が変わっていないことが明白になりました。

なお、4年前にトランプ当選を予想していた著名な調査会社は、トランプ支持者の意向を正確に把握しており、4年前に続き今回の事前予想においても接戦の末にトランプ勝利を予想していました。実際にはバイデン勝利となる可能性が現状高いですが、大接戦を予想していたこの調査会社の予想がより正しかったでしょう。

主要メディアでこうした事前調査が広く伝わらなかったことが、「サプライズの大接戦」を招いた一因で、偏ったイデオロギーや調査に傾き易い主要メディアの信頼性、存在意義を我々はしっかり考える必要があるでしょう。

金融財政政策の重要性が浮き彫りに

トランプ大統領再選の最大の障害になったのは、コロナ禍によって好調だった経済が戦後最大の落ち込みに見舞われたことで、失業率は一時15%まで上昇しました。

1970年代後半以降、再選できなかった大統領(カーター、ブッシュ)は、大統領選挙前にいずれも失業率が8%まで大きく悪化していました。現在の失業率も約8%と、トランプ大統領にとっては同様に不利な状況です。このまま再選にならなければ、高い失業率では再選に至らないという経験則が今回も当てはまることになります。

ただ、コロナ後の大規模な金融財政政策の効果で、落ち込んだ米国の経済は7~9月にはかなり復調しました。コロナによる経済不況という障害があっても、政策対応でトランプ大統領はかなり巻き返したと言えます。

実際に、3月以降の株高によって、大統領選挙直前の過去1年間の株価上昇率(S&P500種株価指数)は7%越まで戻りましたが、経済対策によって早期経済回復期待が高まった結果です。

1988年以降の大統領選挙前の1年間の株価騰落率が+7%以上であれば、現職や後継者が大統領選挙に勝利しており、トランプ政権もこの経験則をクリアしていました。

歴史にifはないですが、あと2、3ヶ月大統領選挙が遅ければ失業率はもっと改善しており、そうであれば、株式市場の経験則が示すように、トランプ大統領再選となっていた可能性があります。

今回の大統領選挙が歴史的な大接戦になったことは、金融財政政策をしっかり行うことが政治的に極めて重要であることを強く示唆している、と筆者は考えています。

<文:シニアエコノミスト 村上尚己>
<写真:ロイター/アフロ>

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