はじめに

対策例2:養子縁組

養子縁組とは、親子関係のない者同士に、法律上の親子関係を成立させる制度です。つまり、サトシさんが弟を養子とすることで、弟はサトシさんの相続人となることができます。これにより、農地法上の「許可」は必要がなくなるのです。このような場合、弟を養子とすることができるのか?という疑問があると思います。法律上の条件は「養子をするもの(サトシさん)が成年に達していること」と「養子(弟)が養親(サトシさん)尊属(親等)または年長者でないこと」です。サトシさんは成年に達しており、弟は尊属でも年長者でもありません。なので、弟でも養子縁組をすることは可能になります。

ただし、この場合でも注意が必要です。弟が相続人になるということは、包括遺贈と同様に遺産分割協議に参加するということです。協議がまとまらなければ、農地だけでなく他の財産の相続も進めることができません。このことを考えると、養子縁組をした後に特定遺贈の遺言書を作成することをお勧めします。また、弟は法律上の子どもになりますので、遺留分も考慮しなければいけません。

まずは相続人と財産状況の確認から

相続財産が農地の場合、対策方法が複雑になるケースが多いです。そのため、色々なことを想定しておかなければ、無理な対策によって農地以外の相続に悪い影響が出てしまうことがあります。

まずは「相続人は誰なのか」「財産状況はどうか」を明確にする必要があります。具体的には、対策を行う方、今回で言うとサトシさんの出生~現在までの戸籍を取得し、相続関係を把握します。ここで、農地を引き継ぐ者が相続人であればそこまで大きな問題になりません。逆に相続人ではない場合には、対策方法の検討に入ります。この際に重要なのは「財産状況」です。農地だけでなく、相続分や遺留分を考慮するため財産の総額や種類を明確にするのです。ここから初めて対策方法の検討が可能になります。農地をお持ちの方は、このような現状の把握から始めることが特に重要です。

<行政書士:細谷洋貴>

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