はじめに
フリーランスや起業の道を選ぶ方のなかには、以前の勤め先から仕事を受注している方も少なくありません。
決まった会社から仕事をもらえると収入は安定しますし、会社側としても勝手知ったる人物に仕事を任せつつ、社会保険料などの負担は減らすことができるのですから一石二鳥なのかもしれません。
独立すると会社員時代とは異なり、社会保険や税の手続きを自ら行う必要があることはもちろんですが、例えば、将来リタイアする際の退職金もありません。独立される場合は、老後までの資金計画をしっかり考えておきたいところです。
自営業のための「退職金」制度
個人事業主になると、仕事をやめるときにもらえる退職金がありません。
国民年金のみに加入している場合、将来、受け取ることができるのは基礎年金部分だけとなり、一般的にサラリーマンが受け取る厚生年金よりも年金額が少なくなります。「自営業者に定年はない」と言われますが、基礎年金だけでは生活が心もとないということもその理由のひとつかもしれません。
そんな人のために国がつくった退職金として、「小規模企業共済」という経営者向けの制度があることをご存じでしょうか?
基本的に従業員が5人以下(業種によっては20人以下)の個人事業主、または会社の役員が加入できます。個人事業主として事業を始めても「法人成り」をして会社設立をすることがありますが、この場合は引き続き小規模企業共済に加入することができます。
毎月の掛金は1,000円から7万円まで500円刻みで自由に選択することができ、掛金の額を途中で増減することもできます。
掛金払い込み時の節税メリット
払い込んだ掛金は、将来仕事をやめるときに退職金として受け取ることができます。また事業を廃業していなくても、好きなタイミングで任意解約することも可能です。
任意解約した場合、掛金を12ヶ月以上払っている場合に限り、払い込んだ掛金の80%から120%に相当する「解約手当金」を受け取ることができます。ただし、任意解約するときの掛金納付が20年未満の場合、受け取れる解約手当金は払い込んだ掛金より少なくなり、元本割れしてしまいますのでご留意ください。
この小規模企業共済の掛金ですが、払い込んだ年に節税メリットを受けることができます。具体的に計算してみましょう。
個人で事業を営むAさんの年間利益(売上から経費を引いた残り)が500万円だとします。毎月2万円の掛金を払い込めば、所得税と住民税を合わせた年間の節税額は約7万円にもなります。
同じく将来の退職金代わりに生命保険に加入した場合、生命保険料の支払いから受けられる節税額は最高でも約3万円ですので、小規模企業共済の節税効果が大きいことがわかるでしょう。
また小規模企業共済は最大で毎月7万円まで掛金を増やせるため、節税額をさらに大きくすることも可能です。