はじめに

いざというときに利用できる貸付制度

小規模企業共済と同じく、個人型確定拠出年金(iDeCo)でも掛金を支払ったときに同様の節税効果を得られます。

ただし、iDeCoの場合は。基本的に60歳以上にならなければ積み立てた資産を引き出すことができません。小規模企業共済の任意解約には元本割れリスクがあるとはいえ、途中で解約できることは大きな違いといえるでしょう(iDeCoも運用成績次第では元本割れのリスクがあります)。

さらに、小規模企業共済には貸付制度が存在します。納付済掛金額の7~9割が目安となりますが、借入申込みの即日(借入窓口が商工中金の場合)、もしくは2~3日(その他の金融機関の場合)で資金を受け取ることができます。

災害や疾病のときだけでなく、運転資金としても1.5%の利率で借入をすることができます。いざというときにすぐ借入を行えるというのは、とても助かる制度ではないでしょうか。

共済金の受け取り時にも節税メリット

小規模企業共済には掛金の払い込み時に節税メリットがあることを、先ほどお伝えいたしました。では、共済金を受け取るときにはどのような税金がかかるのでしょうか。

まず、任意解約によって解約手当金を受け取る場合には、「一時所得」として税金を計算します。

毎月2万円の掛金を5年間、合計120万円払い込んだ後に任意解約し、100万円の解約手当金を受け取ったとします。先ほどの例と同じく年間所得が500万円だとすると、5年間の契約中に受けられる節税メリットは35万円になります。

解約手当金にかかる所得税と住民税が合わせて約7万5,000円となり、元本割れも20万円ありますが、それでも節税メリットが上回るという計算になります。

次に、30年間掛金の払い込みを続けて事業を廃業し、退職一時金として共済金を受け取る場合はどうでしょうか。

30年間で受けられる節税メリットは210万円。受け取れる共済金は、中小企業基盤整備機構の小規模企業共済加入シミュレーションを使用して試算すると約870万円となり、払い込み掛金を150万円も上回ります。

さらに、受け取った共済金は「退職所得」として税金計算され、仮に勤続年数30年の場合は1,500万円までは課税されませんので、今回の場合において税金は発生しません。長く続ければ続けるほど、お得な制度だといえるでしょう。
 
一般の生命保険で老後資金を用意する人もいれば、iDeCoなどで資産運用を行い将来の年金額を増やす人もいるでしょう。とくにiDeCoには小規模企業共済と同じ所得控除を受けることができるため、払い込み時の節税効果が大きく、運用益に課税されないというメリットもあります。一方で小規模企業共済には、貸付制度や任意解約の制度があります。

将来の蓄えとしては、これら節税メリットも計算しながら、ご自身の資金需要に合った制度を選んでいただくとよいでしょう。

(文・中村愛)

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