はじめに
厳格な労働協約は子供の成長を守る「安心」
こういったフランスの労働協約を、前出のトゥルオン氏は「子供本人にとってはもちろん、親にとっても、またモデル事務所を経営する私たちにとっても安心だ」と言います。
パリ市内のバス停に掲示されたラルフローレンのポスター
この「安心」という言葉は、単に子供本人への報酬の保証を意味するにとどまりません。子供の就学機会と就学の権利を守り、心身ともに健全な成長を続けられる環境を確保するシステムが、社会に存在することも含まれます。
子供服ブランド「Lours Paris(ルウスパリ)」経営者のオードレイ・ムーラン氏も、「子供モデルの報酬は、当然本人に支払われるべきだし、成人した時、つまり自分で責任が持てる年齢に成長した時点で支払われるというシステムも理にかなっている」と述べます。一人の人間として子供本人の権利を守るシステムが存在していることは、確かに安心です。
報酬の一部を成人まで保護することを義務付けた「クーガン法」
子役と報酬を語る時、よく引き合いに出されるのが1939年にアメリカのカリフォルニア州で制定された「クーガン法」です。かのチャップリンと共演した子役のジャッキー・クーガンは、当時未成年であったために自身では報酬を管理することができず、親に一銭も残さず使い込まれてしまいました。これを受けて制定されたのが「クーガン法」でした。
日本でも、子役としてトーク番組「あっぱれさんま大先生」などに出演し、人気を博したタレントの内山信二さんが、多大な報酬に金銭感覚や家族関係が狂ってしまったことを後に明かしています。
親は子供の保護者ではありますが、親も人間であり、何が起こるかは誰にもわかりません。金銭を前にし、いわゆる「魔がさす」危険から親を守るためにも、子供の労働協約を厳格に定めることは有効と言えそうです。
〈文:Keiko Sumino-Leblanc / 加藤亨延〉