はじめに
将来は予測できないという真実
もう一度、先程の表を見てください。資産ごとに色分けしていますが、10年間で全7資産のうち新興国国債を除く6資産が年間リターンで1位を記録しています。つまり、どの資産に投資をすれば必ず儲かるのではなく、その年ごとにリターンが高い資産はバラバラだということです。そして、この年はどの資産が最もリターンが良いという事は、事前に分かる人は誰もいないのです。
極端な例を出してみると、2008年に新興国株式に投資をしてしまった人は1年間で6割以上の資産が溶けてしまった訳ですが、2009年に新興国株式に投資をした人は1年間で8割以上も資産が膨れたことになります。
タラレバの話をしていても仕方がありませんから、大事な老後資産の源となる投資資産を過度なリスクに晒さないためには、「この資産が上昇すると思う」とアタリをつけて一括投資をするのではなく、多くの資産に分散することが重要なのです。
当然、投資対象を分散することによって、期待できるリターンが1つの資産に一括投資する場合に比べて低くなる可能性もありますが、その代わりにリスクを抑えることができるのです。
結局は基本に回帰する
どの資産の年間リターンが高くなるかは分からないので多くの資産に分散をする。そして、1年間だと特殊要因に左右される可能性が高いため、長期で投資をする。この話、どこかで聞いたことありますよね?そう、投資の王道としてこれまでも連載の中で何度も紹介してきた「長期×分散×積立」という考え方そのものなのです。
タイトルにもあるように「年率5パーセントで運用しましょう」が実現可能かどうかは、この10年間で見れば、それほど無理のある仮定ではないと言うことはできるかと思います。しかし、それはあくまでこの10年間はそうだったということでしかありません。これまで見てきたように、年によって年間リターンはバラバラですし、どの資産に投資をしていたかによっても左右されます。
つまり、将来の資産設計をする際には年間5パーセントとリターンを仮置きすることは問題ありませんが、実際に投資をする場合は想定されるあらゆる事態に備えて、やはり基本に回帰して分散しながら長期投資をするに尽きるのでしょう。