はじめに
子どもができて話したお金のこと
「1年ほどで妊娠したんです。将来のこともあるし、さすがにこのまま黙っているわけにはいかないと思って彼に生活費のことだけどと切り出したら、彼は『子どもってお金かかるんだよね』『オレ、子どもなんていらなかったのになあ』って。私、心底びっくりして声も出ませんでした」
彼はなぜ自分と結婚したのか。彼女の頭の中をそんな思いが駆け巡りました。すると彼は、「でもしょうがないよね。子どもができたら車を買い換えようかって。いや、そういう問題じゃない。むしろ車は手放してもいいくらい。私はずっと生活費を負担してきて貯金を切り崩して生活しているのにと思い切りぶちまけたんです。すると彼、『オレ、結婚したかったわけじゃないし』って」
彼女はもう無理だと家を飛び出しました。でもふと考えたのです。ここはもともと私が借りて住んでいる家だ、と。そこで義父母の家に行って、今までかかったお金のことなどすべてを話しました。結婚前後にかかった費用、新婚旅行代、その後の生活費などで彼女は500万円ほど出していました。せっせとためた貯金も底をついています。
「義父母は、それでどうしたいのと言うので、このままだと子どももかわいそうなので別れたいと言いました。すると義父母はわかった、お金は明日振り込む。あなたが帰宅したときは息子がいないようにしておくからって」
そのまま家に帰ってみたら、確かに夫はいませんでした。そして翌日には500万円を振り込まれ、その数日後には離婚届が送られてきたのです。
「妙に手回しがいいなという感じでした。義父母からすると息子に従わない嫁はいらないということだったんでしょうか。彼、相当甘やかされて育ったんでしょうね。何でもそうやって親に尻ぬぐいしてもらってきたんでしょう」
養育費をもらっても、父親には会わず…
離婚はしたものの、産まれた子は夫の子です。弁護士を立てて認知はさせました。養育費も月に5万円と決めましたが、おそらく義父母が払っているとアユミさんは思っています。義父母は孫の顔を見たがったので連れて行ったこともありますが、夫は一度も自分の娘の顔を見ていません。そして、そんな息子を諫めることもしない義父母。その奇妙な親子関係を、今もアユミさんは不思議に思っています。
「息子は2歳になりました。ひとりで育てるのは大変でしたけど友人知人の手を借りながらなんとかここまでやってきました。勤務先も非常に理解があったので助かっています」
夫ともう会うことはないかもしれないけど、それでも「大好きだった記憶」は忘れず、いつか息子に伝えたいとアユミさんは考えているそうです。