はじめに
日本も2030年までが「勝負の10年」
日本では菅政権が「2050年炭素ガス排出ネットゼロ」を宣言しました。新型コロナウイルスの感染拡大で21年11月に延期された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)までに、現行目標の「30年度に13年度比26%減」を改訂する方針です。
小泉環境相は12月15日、電源に占める再生可能エネルギーの比率を現在の目標の倍となる4割以上に高める意向を表明。政府はこの再エネ比率を19年度18%から30年度22~24%に高める目標としていますが、欧州主要国の半分程度に過ぎません。
21年春以降、経産省がまとめるエネルギーミックスで30年度の電源構成を固め、排出量の削減目標を詰めていく方向です。政府は参考値として、再エネ比率を50年時点で「50~60%」に高める案も検討し始めています。
洋上風力発電とEVに注目
具体的な脱炭素に向けた動きも出ています。
経産省と国土交通省、民間事業者は12月15日、「洋上風力産業ビジョン」を発表。再エネを主力電源化に向けた切り札に位置付け、洋上風力の普及を急いでいます。発電所と大消費地への新たな送電網の整備計画についても、来春発表を予定しています。環境省と経産省は、電気自動車(EV)普及に向けた補助金政策を発表しました。
政府は2020年度第3次補正予算に「経済構造の転換」政策の一つとして、温暖化ガスの実質ゼロのための技術開発支援基金2兆円を充てています。EVの次世代基幹技術として本命視される全個体電池の実用化への動きを官民で加速させる方向です。
企業による脱炭素への取り組みに、政策面からの需要喚起と消費者の意識の高まりが加わることで、2021年は脱炭素に向けた動きが加速すると予想されます。