はじめに
投資信託は1本に絞り込む必要はない
――ここ数年は、相場変動に応じて機動的に配分を変えたり、買い建てと売り建てを組み合わせて下落相場でも利益を狙う手法を取り入れたりすることで、下落局面での損失を抑える”リスク軽減型”の投資信託も人気ですね。
澤上:選択肢が広がることは、良いことだと思います。さまざまなタイプの投資信託がありますが、良し悪しがあるわけではないので、投資家それぞれがご自分の考え方や相性の合うものを選べばよいと考えます。
ただ、現実に自分がどのタイプの投信や商品を選ぶべきか迷うこともあるでしょう。そういうときは、複数の商品に投資してもいいと思います。たとえば、投資哲学に共感できるもの、パフォーマンスが良いもの、興味ある対象に投資するもの、分散が効いているものなど、気になった商品に実際に投資してみることをおすすめします。
少額で手軽に投資ができるのが投資信託のメリットでもあるので、最初から1本に絞り込む必要はないのです。しばらく投資していると長く付き合えそうな商品がわかってくるので、そこでコアとする商品を絞り込んでいくといいでしょう。
――2020年はコロナ禍で景気が低迷しているのに株価は堅調という乖離が生じた年でした。2021年はどんな年になりそうでしょうか。
澤上:2020年は世界的に実体経済が悪化し、株式市場でも大暴落が起こってもおかしくない年でしたが、一時的な下落で終わりました。これまでの企業の自社株買いに加え、中央銀行による巨額の追加金融緩和によって株価が下支えされたからに他なりません。
こうした無理な延命措置は、長続きするものではないと考えるのが自然です。2021年のどこかで、こうしたツケを払わされる時がくるように思います。世界的な下落相場は、もういつやって来てもおかしくないのです。
リーマンショックから10年以上が経過し、大きな下落相場を経験したことのない個人投資家が増えていることは前述しました。同時に、リーマンショック後に新規設定された多くの投資信託も、大きな下落相場を経験していません。
下落相場は長期で見れば、絶好の買いチャンスであることは過去の歴史を見ても明らかですが、その渦中では狼狽した投資家による損切りが相次ぐものです。
損切りによる解約が続出すると、投資信託は目の前にある絶好の買い場に買い向かうことができず、むしろ大量の売りを迫られます。投資家が離れ、安値のチャンスに買う余力がないと、たとえ後から相場が回復してもその投資信託の回復は非常に難しくなります。
何が言いたいかというと、2021年に来るかもしれない次の下落相場で、生き残るファンドと淘汰されるファンドが明確になる可能性があるということです。
さわかみ投信で積み立て投資をしている投資家は、下落相場も含めて継続していくことの重要性をよくわかってくださっているのですが、残念ながら多くの投資家はそうではありません。相場が盛り上がっている時に高値で買って、下落時に慌てて安値で売ってしまうような残念な投資家層が多いファンドは、危機を迎えそうです。