はじめに

お手軽インデックスと社会性重視、投資スタイルは二極化へ

――今後はどんな投資信託が人気を集めると思いますか。

澤上:近年はインデックスファンドやロボアドバイザーといったほったらかしでOKなお手軽投資が定着した一方で、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)といった非財務面の要素も考慮した「ESG投資」などを通して、長期的に持続可能な成長を見込める企業に投資することで個人投資家も社会的な責任を果たそうとする、相反する2つの投資スタンスが定着しつつあるように感じます。

運用会社の立場としては、自らの資産成長と、社会をより良い方向へと変えていくことの両立は、十分可能であると考えます。現状、こうした社会的な責任を重視して投資信託を選ぶならアクティブファンドを選ぶことになります。しかしもっと、ESGの側面で選んだ銘柄群で構成されるESGインデックスといった指数に連動するインデックスファンドが登場してほしいですね。

――2021年の投資を成功させるには、どういう戦略が良いでしょうか。

澤上:まず、1年で結果を出そうとは考えないことです。5年後、10年後の資産形成を見据えて、上昇が信じられる対象に資金を投じましょう。

前述した通り、日本で約6,000本もある投資信託の中でまもなく選別が起こり、生き残るところとそうでないところが見えてきます。投資信託の時価である基準価額や、預かり金額である純資産総額は相場状況に大きく左右されますが、生き残る投資信託は投資家が資金を投じた口数はどんどん増えているものです。

生き残る投資信託を活用し、相場がどう動いても「投資をやめることなく続ける」という2021年の決断が、2030年の自分を助けるということを肝に銘じていただきたいと思います。

さわかみ投信では昔から一貫して長期投資の重要性を訴え続けていますが、単純な株価指数への長期投資では必ず報われるとは限りません。日経平均株価は上昇しているといっても過去ピークの7割程度であり、30年間持ち続けている人は大きく資産を減らしています。

しかしその一方で、例えばトヨタ自動車に投資をしていれば資産は4倍になっています。良い企業に絞って投資をすることで、成果は大きく異なることも覚えておいていただきたいと思います。

ただ、資産形成において最も効果的な方法は、投資ではなく自分自身の収入を上げることです。とくに若い世代においては、自分自身の成長にリソースを投じることのリターンは、どんなに成績の良いアクティブ投信をも上回るでしょう。それを節約と組み合わせて行えば、手元に残る資産は確実に増えるはずです。

そのうえで、お金にも働いてもらう「投資」をしていくのが理想です。若い世代はお金を働かせる投資を少額で行いながら、同時進行で自分自身の成長を志向していくことが、最も効率的な資産形成術なのです。

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