はじめに
物価面での円安圧力
加えて、原油をはじめとするエネルギー価格の上昇は、物価の面からも円高リスクを軽減する効果が見込まれます。からくりは以下の通りです。
物価が上昇すれば、その分だけ貨幣価値は棄損しますが、逆に物価が下落すれば、貨幣価値は増大します。つまり、理論上、物価高の国の通貨は下落しやすく、物価が上がりにくい国の通貨ほど上昇しやすいことになります。
例えば、ドル円であれば、歴史的に米国のほうが日本よりも相対的に物価上昇率が高かったため、物価面からは常にドル安円高圧力がかかってきたと言えます。
現在に目を向けると、日本の消費者物価(総合指数)は前年同月比マイナスに転じています。昨年11月は前年同月比0.9%下落していますが、その内、エネルギー関連品目が0.6%分押し下げました。
日本の場合、家計支出におけるエネルギー関連品目のウェイトが比較的高いため、エネルギー価格が物価変動に与える影響は大きいと言えます。したがって、エネルギー価格が今後さらに上昇するのであれば、日本の物価下落圧力が弱まり、ひいては円高リスクが低減することが考えられます。
前述のように為替市場では、米長期金利の動向が注目されていますが、長い目で見た場合、国際商品市況をより注目すべきではないでしょうか。
<文:シニア為替ストラテジスト 石月幸雄>