はじめに
研修は動画のほうがわかりやすい
――入社後の研修についても大きく変更されたそうですね。
鈴木文子氏(以下、鈴木): 例年は全員が研修センターに集まって行うのですが、すべてオンラインにしました。参加者は所属する事業所にいながらZoom(オンライン会議ツール)で研修に参加します。
4~5月の研修は、講師が一方的にレクチャーする内容が中心でしたが、「参加者が自分の意見を言えないまま、あるいは理解が不十分なまま終わってしまってはいけない」と、途中からグループワークも取り入れました。
介護に関する様々なテーマを話し合い、最終的に皆の前で発表します。「皆の前で発言するのは苦手でしたが、オンラインだと不思議と喋れました」という人が多かったのが印象的ですね。
――介護の業務研修には「実技」も含まれるかと思います。オンラインではどのように工夫されていますか。
鈴木: 最初は理解してもらえるか不安でしたが、カメラの角度を工夫すれば動画でもリアルに見せることができるとわかりました。
例えば「ベッドから車椅子への移乗」「食事介助」など、各シーンの動きを1~2分で簡単に見られる動画をたくさん用意しています。着替えの介助にしても「右麻痺」「左麻痺」それぞれの対応法など、細かく分けてマニュアル動画を作成しています。
動画は紙のマニュアルや言葉だけの説明よりもわかりやすく、繰り返し見直すこともできます。スマートフォンでも見ることができるため、いつでも、どこからでも確認できるのが大きなメリットです。
――介護業界には変化にうまく対応できない事業者さんも多いようです。貴法人が成功しているポイントはどこにあると思われますか?
前田: 当法人では「職員一丸となって人を幸せにする。人が大切にされる世の中を創る」という理念を掲げ、その浸透に力を入れています。
理念を軸にしたとき、「やったほうがいい」となれば職員一丸となってチャレンジする。そんな文化が根付いているからこそ、変革への取り組みも進んでいるのではないかと思います。
――ありがとうございました。
スムーズなICT導入を成し遂げている法人の多くには、経営トップが率先して導入に動いているという共通点が見られます。トップが施設のありたい姿を描き、自ら推進していくことで、変革が実現するのではないでしょうか。
オンライン上でのバーチャルなコミュニケーションにおいても、よりリアルに感じてもらうための工夫をいかに考えて実践できるか、ひとつひとつの事業所の努力とチャレンジの積み重ねが、コロナ禍に実を結んでいると言えるでしょう。