はじめに

日本のカーボンプライシングに関する取り組みの状況

実は日本もCPのうち、限定的な炭素税を既に導入しています。日本は、2012年に「地球温暖化対策のための税」という税を創設しており、石炭などの化石燃料に対してCO2排出量1トン当たり289円を石油石炭税の本則税率に上乗せし課税しています。

しかし、現行の税制では脱炭素化を効果的に推進するためには、十分でないとの指摘もあります。OECD(経済協力開発機構)は、OECD加盟国と20カ国・地域(G20)のうち42カ国を対象に2015年時点の「炭素価格差」に関する分析を行いました。

炭素価格差とは、OECDが各国のCPの導入状況を評価するために用いる指標です。GHG排出により引き起こされる気候変動コスト(推計値)に対して各国の有効炭素価格(炭素税に加え排出枠取引やエネルギー課税分を加味した炭素価格)が何%下回っているかを算出したものであり、OECDはこの炭素価格差を縮小するよう各国に提言しています。

この分析によると、炭素価格差が小さい国は欧州が中心であり、日本の炭素価格差はフランスやドイツ等と比べ大きい状況です。欧州連合(EU)と同じ2050年脱炭素化という非常に高い削減目標を日本も掲げた今、CPを通じてEUと同等の費用負担を排出主体へ課すべきかを検討する必要性が高まりつつあります。

自主的にカーボンプライシングを行う企業も

一方、政府によるCPの本格導入を前に、一部の日本企業はインターナルカーボンプライシング(以下、ICP)という脱炭素化の取り組みを既に推進しています。ICPとは、企業が社内における炭素価格を独自に設定し、企業の意思決定にGHG排出コストを組み込むことで、事業活動の低・脱炭素化を図る取り組みのことです。

企業の環境関連の取り組みを評価する英非政府組織(NGO)のCDPが公表した「CDP気候変動レポート 2020」によると、2020年時点においてICPを導入済みの国内企業は100社以上にのぼります。既にICPを通じて事業の低・脱炭素化を進めている企業は、実際に政府がCPを本格的に導入しても、業績への悪影響を抑え、また新たな収益機会を獲得できる可能性があります。

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