はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。

昨年末、祖母が亡くなり、一戸建ての実家が空き家となりました。両親もすでに他界しており、私が相続します。私は既に別の場所で一戸建てを購入し生活しているため、この実家をどのようにしようかと悩んでおります。

私(40歳)の家族構成は、妻(40歳)、息子2人(小1、3)です。共働きで世帯年収は1,300万円程度です。ローンもすでに完済し、現時点の資産(株式・預貯金等)は約3,000万円程度です。

実家は土地が65平米で木造2階建て築40年。昨年の評価額は土地建物合計で800万程度です。祖母が15年近く一人暮らしをしていましたので、一通りの生活用品はまだ整理されず、置いてある状態です。私の昔使用していた箪笥や机等も置いたままです……。周辺は住宅街であり、小学校、中学校も近くにあります。JRも歩いて10分程度、のぞみが止まる駅も歩いて15分程度。スーパーやコンビニもたくさんあり、非常に便利な場所です。

賃貸の場合、周辺の立地で同じような条件で検索すると約8~10万円程度の家賃で出ていました。賃貸の場合、リフォームなどの先行投資や維持費などを考えると、利益が出るかどうかわかりません。ただ、放置しておくよりマシかと思いますが、いかがでしょうか? 売却or賃貸、どちらがいいと思われますか?
(40代前半 既婚・子供2人 男性)


深野: ご実家の不動産に関するご質問ですが、結論からいえば売却がいいと思います。

ご質問からは利便性の高い立地のようですが、果たしてリフォームなどの先行投資を行っても、長きに渡り借り手がつくかという問題があります。

減少する人口、上がる空室率

家賃収入を下げれば借り手は見つかるかもしれませんが、家賃を下げるほど先行投資を回収する期間が長くなることを忘れてはなりません。報道などでご承知のとおり、総務省が公表した平成25年のデータによれば日本全国での空室率は13.5%にのぼります。

また、平成27年の年間推計では、人口は概算値で29万人も自然減(出生者数-死亡者数)となっているのです。そのような状況下で借り手をずっと確保していくのは、年々厳しくなっていくと思われます。

不動産は金融資産と異なり、保有しているだけで固定資産税などの諸経費が発生する、つまり借り手がいなければ持ち出しが発生し続ける資産なのです。

余剰不動産が増えるほど売却は難しくなる

不動産にも値上がり期待があるかもしれませんが、東京都区部のような人口が増加している地域であれば値上がりもありえるのでしょうが、その値上がりが点から面に広がっていくことは難しい気がしてなりません。

本来、資産運用、または資産の有効活用は利益の確保を期待して行うものであって、損失を発生させることではありません。すべての不動産投資が利益を生まない(全員が失敗する)わけではありませんが、利益を生んでいる人は片手間で不動産経営を行っているのではなく、不動産業を営むくらい時間を割いて活動しているのです。

酷な言い方になり申し訳ございませんが、「放置しておくよりマシかと思います」という心意気では成功もおぼつかない気がします。気分を害してしまったら申し訳ございません。

現状でも不動産は余っており、将来さらに余剰不動産が増え売却が難しくなることを考えますと、早めの売却を検討したほうがよいかと思われます。

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