はじめに

内閣府が実施する「景気ウォッチャー調査」では、調査時に現状の景況判断を「良くなっている」「やや良くなっている」「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」の5段階で回答します。

DIを作成する時には0.25刻みでそれぞれ1から0までの点数を与え、これらを各回答区分の構成比に乗じて、DIを算出します。全員が「変わらない」と回答すると50.0になるので、DIは50が景気判断の分岐点です。

景気ウォッチャーは、なぜそう判断したかの理由を明記するので、判断理由に含まれるキーワードから、どういう要因が注目され、判断に影響したかがわかります。判断理由は、現状判断と先行き判断のそれぞれで回答します。

2021年1月、年明け最初の景況感はどのような結果が出たのか、確認してみましょう。


新型コロナウイルスの現状はかなり深刻な事態

2021年1月の景気ウォッチャー調査は、現状判断DIは前月差▲3.1、季節調整値は31.2となりました。昨年4月を底に10月まで回復が続いていましたが、新型コロナウイルス感染拡大第3波の影響で11月に下落に転じ、1月まで3ヶ月連続で低下しました。

前回の緊急事態宣言が出た昨年4月の全体のDIは 9.4、飲食関連は▲2.8でした。それと比べるとDIの水準は高いですが、2度目の緊急事態宣言発出の影響で景況感は悪化しています。

飲食関連は15.1と景気ウォッチャー全員が「やや悪くなった」と答えたときの25.0より約10ポイント低い厳しい数字になりました。飲食関連や旅行・交通関連など家計動向関連の不振が目立っています。

一方、1月の2~3ヶ月先の見通しを示す先行き判断DI は39.9で、12月から3.8ポイント上昇しました。「ワクチン接種がスタートすれば、景気には追い風になる(南関東=百貨店総務担当)」という、先行きの改善を期待する声もありました。

1月の「新型コロナウイルス」関連判断DIを作成してみると、現状判断DIは27.0と分岐点の50を下回り、3ヶ月連続で悪化しました。

全員が「やや悪くなっている」とコメントすると、25.0なので、それに近い数字であると言えます。現状判断で新型コロナウイルスに言及した人は462人で、割合は全体の4分の1に当たります。

現状判断で緊急事態宣言に言及した人は441人で、「緊急事態宣言」関連現状判断DIを作成してみるとその値は18.9でした。緊急事態宣言を出さざるをえない新型コロナウイルスの現状はかなり深刻な事態であることがわかります。

12月では現状判断で緊急事態宣言に言及した人は5人にすぎず、「緊急事態宣言」関連現状判断DIが40.0であったことと、様変わりです。

また、第3波に言及した人は26人で「第3波」関連現状判断DIは16.3です。GO TOキャンペーンに言及した人は102人で「GO TOキャンペーン」関連現状判断DIは10.5とかなり低い数字です。キャンペーン中止の影響が大きいことがわかります。

なお、「為替」や「貿易摩擦」など、これまで景気の大きな変動要因になったことがあるキーワードに言及した人は皆無でした。多くの人が注目したキーワードはほとんどが新型コロナウイルスであり、景況感の悪化は主に新型コロナウイルスによるものであることがわかります。

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