はじめに
予想外の強硬姿勢、就任早々に特別措置を利用へ
上院ではより慎重な審議のために議事妨害が認められおり、それを終わらせて法案を可決するためには本来であれば60議席が必要です。財政調整措置とはその議事妨害を防ぎ、法案を50議席の単純過半数で可決できる特別措置なのです。
民主党の「財政調整措置」を含む予算決議案の可決は、共和党との超党派の協力を早くも諦めるという意思表示となっています。
2020年12月には、一人当たり600ドルの家計向け給付金を含む0.9兆ドルの景気対策が超党派の合意によって成立しています。そこにさらに1.9兆ドルを上乗せすると合計で2.8兆ドルとなり、民主党が2020年9月に下院で可決した当初の景気対策である2.2兆ドルを大きく上回るため、規模が大きすぎるという共和党の主張にも分があるように思えます。
また、サマーズ元財務長官やブランシャール元IMFチーフエコノミストといったそうそうたる面々も、今回のアメリカンレスキュープランが過剰だと指摘しています。こうしたことから、1.9兆ドルの民主党案、0.6兆ドルの共和党案の中間程度の規模に落ち着くと筆者は想定していましたが、実際には民主党の主張通り1.9兆ドルに近い金額となりそうです。
また、財政調整措置はあくまでも例外規定で、多用はしないというのが暗黙のルールとなっています。過去を見ても、ブッシュ政権ではブッシュ減税、トランプ政権ではトランプ減税、オバマ政権ではオバマケアと、自らの名前を冠するような目玉政策に限って用いるのが慣例となっていました。
筆者は今年の夏以降に審議が本格化する来年度予算における法人増税やキャピタルゲイン増税、大型環境インフラ投資で財政調整措置が用いられるものの、アメリカンレスキュープランでは超党派の協力を模索すると考えていました。