はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

現在、自宅の購入を検討しています。その際に既存の借り入れをどうすればよいか悩んでいます。現状、以下の3パターンを考えています。


(1)不動産投資用の借り入れを全額完済し、頭金は少ないかたちで自宅を購入する
(2)投資用の借り入れはそのままにし、その分、頭金を多くして自宅を購入する
(3)上記(1)と(2)の中間のかたちで自宅を購入する


現在の資産としては、金融資産を約5,500万円。投資用に23区内のワンルームマンションを3室持っています。給与約800万円と不動産収入が240万円あり、投資不動産用の借り入れ残として約2,000万残っています(金利1.7%程度)。


金融資産のうち、投資用の借り入れ相当額程度は預金やクレジット債で保有しているため完済は可能な状態ですが、それ以外はほぼETFや投資信託などのリスク資産で保有してます。どの選択肢も一長一短あるため、悩んでいます。最も妥当な選択肢はどれか、アドバイスをお願いします。なお、現在の月々のキャッシュフローは10万円程度の黒字基調です。
(30代 既婚・子供1人 男性)


内藤: ご質問ありがとうございます。

結論としては、不動産投資用の借り入れを全額返済し、頭金は少ないかたちでご自宅を購入されるのがよいと思います。

その理由はいたってシンプルで、借り入れは金利が低い方法を選択すべきだからです。

借り入れは「金利」で選ぶ

不動産投資用の金利は、一般に住宅ローンよりも高くなります。

現在1.7%で借りられていますが、住宅ローンであれば、おそらくそれよりも低い金利で借りることができるはずです。

これを前提とした上で、自宅購入の際に住宅ローンをどの程度借りられるかを確認し、投資用不動産の借り入れ残高を、どこまで返済するか検討することが手順としてはよいと思います。

投資用の不動産を担保に借り入れても、自宅を担保に借り入れても、バランスシート全体で考えると借入額は同じです。

そうであれば、できるだけ金利水準の低い借り入れにシフトした方が賢明だと言えるのです。

次のステップは「資産全体」の把握

それよりも今後の問題は、借り入れを固定金利で行うのか、変動金利で行うのかといった点や、資産全体のリスクをどのように把握していくのかという次のステップにあります。

おそらく現状は変動金利での借り入れと想像しますが、住宅ローンの場合には、長期の固定金利で借り入れることができます。

金利上昇リスクを抑えながら、返済期間を長くすることで、月々の返済額を減らすということも可能です。借入金額だけではなく、期間や固定や変動など金利の形体についても慎重に決定すべきです。

また、借り入れ相当額を預金やクレジット債で保有しているということですが、金利と預金が逆ザヤになっているのであれば預金で運用するメリットはありません。

そのままにしておくよりは早期に返済を行う、あるいは預金以外のリスク資産に投資することも検討できると思います。

不動産という実物資産と金融資産に分散されたバランスのよい資産運用を実践されていると思いますので、借り入れ方法や運用中の投資資産の見直しなど、細かいチューニングを行うことで、資産運用と自宅購入を、さらに効率的に実現できます。

まずは、住宅ローンの借り入れがどのような条件でできるのかを相談し、自分の資産と負債を合わせたバランスシートを作ってみてください。

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