はじめに

2月5日、中国で動画投稿アプリ「クアイショウ(快手)」を運営する快手科技[クアイショウ・テクノロジー](香港:1024)が香港市場に上場しました。

同社は主にショート動画やライブ動画、ライブコマースのプラットフォームを運営しており、2020年9月時点のデイリー・アクティブ・ユーザー数(毎日1回以上アプリを利用する人)は約3億人と中国の「ティックトック(TikTok)」の約6億人に次ぐ業界第2位の規模を誇っています。

今までソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)と言えば、欧米を中心とした「フェイスブック(facebook)」や「インスタグラム(Instagram)」、「ツイッター(Twitter)」、アジアを中心とした「ウィーチャット(Wechat)」、「ライン(LINE)」など文字や写真を投稿するサービスが一般的で、人々にとって重要なコミュニケーション手段として広く普及してきました。

しかし最近では、通信技術の進化に伴ってより直観的に情報を伝達できる動画投稿アプリの人気が急速に高まっており、SNSの主戦場は文字や画像から動画へとシフトし始めています。

その中で、中国の「ティックトック」(バイトダンス傘下、未上場)と「クアイショウ」は欧米のIT企業に先んじてビジネスモデルを確立させ、新たな時代の寵児として資本市場や投資家から大きな期待が寄せられています。


「ショート動画」のTikTokと「ライブ動画」の快手

ティックトックとクアイショウを比べると、前者は再生時間が短い「ショート動画」に強く、広告主から得られる広告収入が最大の収益源であるのに対して、後者はリアルタイムで配信する「ライブ動画」に強く、視聴者から得られる投げ銭収入が最大の収益源です。

投げ銭とは、ライブ動画の配信者がネット上で様々な芸を披露したり、人生相談を受けたりすることで、視聴者が感謝の気持ちとして任意で渡すお金のことです。

このお金は、クアイショウのプラットフォーム上で一旦バーチャルアイテムに換えられ、視聴者が配信者にアイテムを贈った時(投げ銭が行われた時)に同社の売上高に計上されます。また、売上計上された投げ銭の一部は、一定比率に基づき同社から配信者に支払われる仕組みになっています。

クアイショウ・テクノロジーが開示した情報によると、同社の2020年1~9月の売上高は407億元、売上構成はライブ動画配信(投げ銭収入)が62%、オンラインマーケティング(広告収入)が33%、その他サービス(ライブコマース収入など)が5%と、投げ銭収入が売上高の大半を占めています。

一方、ティックトックは非上場会社で売上高が開示されていませんが、海外メディアの報道によると、ティックトックの親会社であるバイトダンスの2020年の売上高は約2,400億元、その中で広告収入は1,800億元以上と全体の75%を占めるとされています。このことから、ティックトックの収入の大部分は広告から得ていると思われます。

SNSの世界では、先行投資によってユーザー基盤を広げ、そこから収益化にもっていくことが定石ですが、収益化の方法を見るとティックトックはフェイスブックと同じ「欧米式」、クアイショウは中国の投げ銭文化に根付いた「中国式」のやり方を取っていると言えます。

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