はじめに
予想外のOPECプラス会合結果
米長期金利上昇に拍車をかけた材料として、3月4日に開催されたOPEC(石油輸出国機構)プラス会合も挙げられます。
事前の観測では、サウジアラビアが4月以降自主減産をやめ、また、日量50万バレル程度の増産が認められるとされていました。しかし、前日の3日の一部報道で「関係者によるとサウジアラビアが自主減産を継続」と報じられ、そこから原油先物価格は上昇します。
実際のOPECプラス会合でもサウジアラビアの4月以降日量50万バレル増産は否決され、日量1百万バレルの自主減産を維持すると発表されました。原油先物価格は週末にかけてさらに上昇し、この動きも米長期金利上昇を支える結果となりました。
予想より強い米2月雇用統計
では次に、2月の米雇用統計結果を確認しておきましょう。米10年債利回りは週初の1.40%から1.58%まで上昇し、ドル円も週初の106.50から108.50まで上昇して3月5日の米2月雇用統計発表を迎えることになりました。
結果は予想以上に強い内容となりました。2月の非農業部門雇用者数が予想より上昇していたことに加え、1月分も大幅に上昇修正されました。
この予想より強い米2月雇用統計発表直後に、米10年債利回りは1.6238%まで上昇し、ドル円も108.64まで高値を伸ばしました。しかし前述したように、週初から米10年債利回りもドル円も上昇してしまっていたため、予想より強い米2月雇用統計直後の反応は長続きせず、NY時間の取引終了時には週末のポジション調整、利食いの動きとなって、米10年債利回り上昇もドル円上昇も一服との結果となりました。
週明けの米原油先物価格は地政学的リスク(イエメンのイスラム教フーシ派によるサウジアラビア原油生産施設へのミサイル・ドローン攻撃)でさらに上昇しています。米経済回復への期待はさらに強まっている状況を考えると、目先のドル円は1ドル110円方向に上昇することも予想されます。
市場参加者の大半は1ドル100円割れ、1ドル90円台定着を予想していたと思われるため、ドル円が上昇すればするだけ「踏み」(ショートカバー)が強まる可能性もあります。ご参考までに、昨年末での筆者の予想は下記の通りです。
<文:チーフ為替ストラテジスト 今泉光雄>