はじめに
コロナ禍の世界の宿命的に出た作品
──それは今のコロナ禍の世界に、突如放り出された私たちにも通じるものもあるのでしょうか?
そうですね、2月末の今この作品が日本で公開されるのは面白いと思っています。意味があるのかなと。この作品のテーマは、自分のアイディンティティを探すためのものでもあるのですが、それは理屈であって、タケシは最終的に自分の宿命を受け入れます。自分の宿命を理解し、その場所へ戻る旅です。
©TURQUOISE SKY FILM PARTNERS / IFI PRODUCTION / KTRFILMS
──もしコロナ禍がなければ、この作品に対する観客の印象も変わっていたかもしれませんね。
違った見方になると思います。この時期だからこそ、考えさせられることもあるし、こういうファンダメンタルまたは根源的(?)なテーマの作品というのは、こういった時期だからこそ広まっていく。ただ、今回はプランニングして出したものではなく、宿命的にこのタイミングで日本で発表されることになりました。
柳楽くんとの出会いも宿命的だった
──柳楽優弥さんのキャスティングも、ある種の縁を感じだとか。
はい、柳楽くんとの出会いは宿命でした。今回の映画は1カ月ほどモンゴルで撮影をしたのですが、そもそもロケ地が首都のウランバートルから車で10時間走った先で、撮影が始まると途中で一度日本に戻ることはできません。
柳楽くんは売れっ子の役者です。1カ月もスケジュールが空くことはまずない。その中で「柳楽優弥が1カ月空いているかもしれない」という情報を得ました。これはと思い、すぐパリから日本の事務所にアポを取り、その翌日に飛行機に乗って東京へ行きました。そして日本のプロデューサーと企画書を出し、本人の前で映画のことを説明しました。翌日、「やりたい」と返事をもらえました。