はじめに
映画人にとってのコロナ禍とは
──『ターコイズの空の下で』は、第68回マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭でプレミア上映して「才能賞」と「FIPRESCI国際映画批評家連盟賞」を受賞。その後は同年のパリでのキノタヨ映画祭、そして2020年11月のポーランドでのカメリマージュ映画祭にも招待されました。カメリマージュ映画祭はコロナ禍により結果的にオンライン開催となりましたが、今の状況をどう思いますか?
映画を作る人にとって最悪でしょうね。今はストリーミングサイトで見るのが流行になっていますが、『ターコイズの空の下で』はモンゴルの美しい景色を大きなスクリーンでの中堪能できるように8Kで撮りました。
©TURQUOISE SKY FILM PARTNERS / IFI PRODUCTION / KTRFILMS
さらに映画館が閉まることで、公開予定だった作品の公開スケジュールが後ろにずれます。大規模予算の映画で今後の映画館の公開スケジュールが押さえられていく中、この作品のような小さな規模の映画はそれら予算の映画と比べて、どうしても弱いです。
オンライン化した映画祭と映画
──映画祭がオンラインになることで、映画イベントのあり方もずいぶん変わるのではないでしょうか?
プレミア上映をしたマンハイム・ハイデルベルク国際映画祭では700人を入れての上映を何回かしました。そういう中での上映だと観客からの直接のエネルギーをすごく感じるんです。オンラインだと、それを感じづらいことが残念です。
──上映以外の場所での交流も映画祭の醍醐味ですよね。
世界中から集まった、自分と同じ情熱を持っている人に会える、話せる、対談できるというのが映画祭の良いところです。カンヌ国際映画祭なんか行くとまさにそう。普段は忙しくて会えないプロデューサーとかにも、カンヌの町中で会えることがある。コロナ禍を機会に、これからもしオンラインが主流になっていくとしたら、それは寂しいですね。
コロナ禍がもたらしたもの
──しかし、ポストコロナは何か新しいスタンダードを確実に残していきますよね。
このような状況がずっと続くと、案外人に会わなくても生きていけるなと感じてしまうのも事実です。軽薄な社交は削って、より大切な人との繋がりを大事にしようという考え方になるかもしれない。そして、こういう考え方の世代が増えてくれば、特に映画界は社交的ですが、うわべだけのパーティーなども少なくなるかもしれませんね。
──コロナ禍という状況において、映画そして芸術とは私たちにとって何でしょうか?
人間の心に必要なものだと思います。映画、そして芸術とは、どんな人にも必要なものであるとは思いますが、贅沢なものでもあります。余裕がないと作れませんし、触れられません。こういう時代だからこそ、映画そして芸術に触れられる機会がうまく整ってほしいです。