はじめに

どの程度の金利上昇ペースなら株式市場は耐えうるのか

株価と金利の関係を考える上で、決定的に重要なのは、予想PER(株価÷予想1株あたり利益:EPS)と実質金利の関係であると考えられます。実際、ここ数年は両者の(逆の)連動性が明白で、金利が上がるとPERが低下し(株価は下落)、金利が下がるとPERが上昇する(株価は上がる)関係にあります。

S&P500の12ヶ月先予想PERの動きを米10年実質金利で説明した回帰分析(期間は2018年以降、直近まで)によって、予想PERの金利感応度を求めると、実質金利1%(100ベーシスポイント)の上昇で、予想PERがおよそ3倍(ポイント)下がるという結果が得られます。従って、実質金利が0.3%上昇すると、予想PERはおおむね1ポイント切り下がる計算となります。

そもそも、米長期金利が上昇傾向にあるといっても、絶対的な水準は決して高くありません。10年国債利回りは1%台の半ば~後半ですし、10年実質金利は未だマイナス圏にあり、実体経済への影響は限定的と考えられます。

それでも、金利上昇に対して株式市場が動揺を見せるのは、投資家が金利上昇のペース・速さに警戒感を示しているためと解釈されます。一般に、株価は、PERと利益(EPS)の掛け算によって求められます。そのため、仮に金利が急上昇してPERが急低下すると、例え業績(EPS)見通しが改善していても、その低下スピードに追いつけない(株価は下落する)ことがあります。

では、どの程度の金利上昇ペースなら、株式市場は耐えうるのでしょうか。今の米国の業績予想の改善モメンタムは4週間で2%程度です(12ヶ月先予想EPSが4週間で2%増加しているという意味)。それと同じペースでPERが低下する分には、理屈上、株価への影響は中立に保たれることになります。

現状、S&P500 の予想PERは22倍台の前半であり、その2%に相当するのは0.4~0.5ポイントです。予想PERを0.4~0.5ポイント低下させる実質金利の上昇幅は、先述の回帰分析に基づいて逆算すると、概算で15ベーシスポイント(0.15%)程度と求められます。

つまり、業績(EPS)見通しが4週間で2%ほど切り上がる状況下なら、同じ期間に実質金利が0.15%程度、上昇したとしても、理屈上は株式相場へのマイナス影響を回避できることになるのです。

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