はじめに
日銀はETF購入方針見直しも影響は限定的か
日銀は3月の金融政策決定会合において、ETF(上場投資信託)の購入方針を見直しました。従来、年間で原則6兆円、上限12兆円という目安を設けて、株価下落局面での購入が行われてきましたが、このたび「6兆円の原則」が削除されました。
もともとETFの大量購入は、株式などのリスクプレミアムを引き下げることを目的に、2013年から始まった政策の一つですが、当時、12,000円台にあった日経平均株価は今や3万円台に到達する状況下で、その役割は十分に果たされたとの見方が増えつつありました。
最近では購入額も目に見えて減ってきており、市場関係者の多くも「出口」に近づきつつあることを薄々感じていたのではないでしょうか。そういう意味では、日銀と市場との間で十分な意思疎通が成り立っていたといえるのかもしれません。
「原則」は廃止となったものの、日銀によるETF購入の枠組み自体は残っています。そのような株価急落時におけるセーフティネットを残しながらの原則の削除は、株式市場へのマイナス影響を限定的なものにすると考えられます。
より重要な視点は、業績改善の方向性であると考えられます。景気に敏感な企業の割合が高いといわれる日本市場では、世界的な景気回復期待を背景に、12ヶ月先までの予想利益が顕著な改善傾向を見せています。
4週前と比較した12ヶ月先予想EPSの伸びは直近(4/1)で3%を超えており、米国を上回る勢いを見せています。日本の予想EPSの伸び率が米国を上回る状況は、昨秋以降、頻繁に見られるようになってきており、日本企業の業績改善度合いの強さがうかがえます。景気敏感業種を先導役に、米国株に対する日本株の優位性が、今後、鮮明になる可能性もあります。
市場金利の上昇ペース加速や金融政策方針の急転換がない限りは、ファンダメンタルズの改善に支えられた株価上昇は継続する可能性が高いと見るべきでしょう。一時の相場不安に振り回されるのではなく、より本質的な部分に目を向けた上で、冷静な対応を心掛けたいところです。
<文:チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和>