はじめに
市場成熟化に伴う「専業化」
「市場の成熟化」が進展することで「専業化」の流れが継続し、特長のある中小型株企業が業績を伸ばしたことも一因です。20世紀は経済成長に伴う市場拡大のなかで、資本力のある大企業に比較優位がありましたが、21世紀には水平分業によるビジネス領域の細分化が進展したことが中小型株優位に影響したと思われます。
市場が成熟していくなかで、企業間の競争が激しくなり、特定の分野で真の競争力を持つ企業(専業企業)こそが活躍できる局面になったのです。
経済の内需シフトが中小型株に恩恵
日本経済の「外需から内需へのシフト」も中小型株への追い風になっています。相対的に中小型株は内需型企業が多く、大型株には外需型製造業企業が多いと言えます。
外需型製造業企業は当然ながらグローバル・コンペティションに晒され、特に「電機・精密」業種に属する大型株企業には苦戦が目立ちました。一方、「情報通信・サービスその他」業種は大型株においても最大の構成を占めているが、基本的には内需型新サービスのウエイトが高く、また消費の「モノからコト」へのシフトも相まって重要性が増していると考えられます。
情報開示進展により中小型株のリスクが軽減
コーポレートガバナンス改革の進展、情報開示の充実(IR積極化など)、経営者の意識変化なども中小型株に対する評価の改善に寄与しています。
以前は大型株企業全般と中小型株企業全般とでは情報開示姿勢に明確な違いがありました。しかし近年では、インターネットなどを通じたIRツールは洗練され、決算説明会や企業説明会の回数も増えています。流動性を含めた中小型企業への投資リスクは、情報開示を通じて軽減されたと言えるでしょう。
中小型株のパフォーマンスの反転上昇時期は?
2018年6月以降は中小型株のアンダーパフォーム局面が続いています。米中貿易摩擦やコロナショックによる企業業績悪化、またコロナ対策としての大規模金融緩和が大型株に有利に働いた可能性があります。しかし、
(1)直近では企業業績の回復感が鮮明になりつつあること、
(2)中小型株のアンダーパフォーム局面が30か月以上続いていること、
(3)中小型との大型株のPBRの差がピーク比で大きくなってきたこと、
などから中小型株のパフォーマンスがいつ反転時期を迎えてもおかしくない時期に差し掛かっていると考えられます。
<文:企業調査部 嘉山美樹子>