はじめに
日本株“だけ”が冴えない
米国市場では、今週S&P500とナスダック総合が過去最高値を更新しました。グローバルで「リスクオフ」に傾いているわけではなく、日本株の相場がさえないのです。この1カ月のパフォーマンスを海外株と比べると、S&P500は5.4%、欧州株の指標であるストックス600は3.1%の上昇に対してTOPIXはマイナス3.3%です(3/26~4/26まで)。
この株価パフォーマンスの違いは景況感の差です。わかりやすい例を挙げましょう。テレビ東京ニュースモーニングサテライトが番組出演者のアンケートをもとに算出する「モーサテ景気先行指数」があります。直近の数値は、米国53.4、欧州34.1、中国23.9です。それらに対して日本は若干ながらマイナス0.0。けた違いに低いどころかマイナスです。
日本株の上値の重さは、日本の景況感が悪いから、という単純な理由によるものだったのです。
ワクチン接種の遅れで露呈した日本の「後進性」
問題はなぜ欧米に比べて景況感が悪いのかですが、これもシンプルです。コロナの対応が遅れているからに他なりません。
まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の休業要請、時短要請と言っても所詮は「お願い」でしかありません。欧米の「ロックダウン」のような厳格な対応と比べればはるかに緩慢な措置です。
また、いくら自粛で人の流れを抑制できたとしても時間稼ぎでしかありません。コロナ克服の鍵はワクチンであるのは明らかですが、日本はワクチン接種率が圧倒的に低く、これが文字通り致命的なディスアドバンテージになっています。
こういう状況では主要国・地域の中で日本の景気の先行き見通しが低いのはもっともであると言えます。
ワクチン接種率の低さが象徴するのはまさに我が国の「後進性」です。ワクチン接種が進まないのは我が国の行政システムが機能不全に陥っていること、時代錯誤であること、決定的にデジタル化が遅れているからです。
いまさら嘆いても取返しがつきませんが、我々にできることは相当の危機感をもってDXを推進していくほかはないでしょう。
見通し暗い日本株でも好調なのは?
決算序盤戦で好業績を示しても急落する銘柄が多いと述べましたが、その中でオービックは例外でした。
オービックが発表した2021年3月期の純利益は8%増の380億円、9期連続で最高益を更新しました。今期の純利益の見通しについては5%増の400億円と発表し、QUICKコンセンサスの422億円に届きませんでした。
このため、これを嫌気した売りが先行、株価は一時6%安まで売られたものの、その後切り返しました。前日比プラスに浮上すると、安値18,730円から20,200円まで1,500円超の値幅での大陽線で引けました。その後も続伸し、下落する日経平均とは逆行する動きとなりました。
オービックと言えばまさにDX化推進の中心的企業です。我が国にとってデジタル化推進は不可逆的なテーマであることから、銘柄選択においてもこれを抜きには語れません。
デジタル関連銘柄はグロース企業が多く、米国の長期金利上昇などで調整を迫れてきましたが、ここにきて長期金利の上昇も一服感があります。デジタル関連銘柄が上昇基調に回帰するタイミングはそう遠くないでしょう。
<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>