はじめに

ケース2:取引先との会食や接待ゴルフの時間

企業同士の付き合いでは、業務上のやり取りのみならず、交流を目的としてあるいは取引先担当者をもてなすために会食やゴルフが催されることがあります。このような催しへの参加は、一見すると本来の業務とは離れてはいますが、他面では営業ツールとしての役割も否定できないでしょう。ならば、その会食等の時間は労働時間にあたるのでしょうか。

取引先との会食や接待ゴルフの時間については、原則として労働時間にあたらない場合が多いといえるでしょう。なぜなら、こういったイベントについては、取引先との親睦を深めることが目的とされていることが多く、こういった目的の範囲内である限りは使用者の指揮命令下に置かれていると評価することは難しいからです。

もっとも、取引先との会食や接待ゴルフにも様々な目的があり、一概にすべてのケースにおいて労働時間性が否定されるわけではない点には注意が必要です。労働時間になりうるケースを類型化すれば、次のようなケースが挙げられます。

  (1)労働契約上の主要な業務との関連性が強いケース
  (2)参加を義務づけられているケース
  (3)具体的な指揮命令があったといえるケース

たとえば、(1)では、イベントの時間中にもっぱら商談の話し合いが行われている場合などが該当するでしょう。また、(2)では、会社から具体的な出席を義務づけられている場合はもちろんのこと、参加しないと評価においてマイナスに扱われたりするケースも黙示的な参加への義務づけがあると評価される可能性が高いです。(3)では、上司がともに参加した場合に、その上司からイベント中の接客について具体的な指示を受けているケースも労働時間と認定される可能性は高まるでしょう。

ケース3:出張での移動時間

出張に移動はつきものですが、純粋に「移動する」ことだけに着目すれば、それは本来予定された業務ではないといえます。あくまで移動時間は、移動先で仕事をするための準備時間のようなものです。一方で、労働者は「業務のため」に時間を費やして移動します。本来、その仕事がなければ自由に使えたはずの時間を移動に使っているのです。

したがって、会社に命じられた出張の場合、たとえ会議の開始時間が所定始業時刻だったとしても、移動時間を勘案して自宅を出発する時間を早くする必要がありますし、出張先での業務終了時間が所定終業時刻だったとしても、自宅に帰ってくるのはいつもよりも遅い時間になるでしょう。自分のプライベートな時間が、業務のために奪われてしまうことからすれば、移動時間も労働時間にあたると考えていいように思います。

最初に述べたように、労基法上の労働時間にあたるかどうかは、指揮命令下に置かれている時間かという観点で判断されます。この観点でいえば、基本的に飛行機や電車の中では、本や新聞を読んだり私的なメールやネットサーフィンをしたりといった自由な行動が可能なため、指揮命令下に置かれた時間とは通常いえないと考えられます。そのため、原則として労働時間にはあたりません。

ただ、上司と同行して、移動中に出張先の業務についてミーティングなどをしたり、仕事の依頼がメールで来ることもあるでしょう。急ぎの案件では、電車の中で対応せざるをえないときもあります。移動時間中であっても、その実態に照らしてみると、指揮命令下に置かれていたと評価され、労働時間にあたる可能性があります。