はじめに

「企業」と「個人」のパワーバランスの変化

いまの学生の親の世代の就活は「就社」でした。まだ終身雇用が前提で、一生勤めることができる企業に採用されることを目標としていたのです。主役は、どちらかというと企業の側でした。

しかし、いまは違います。将来的に自分がやりたい仕事に就くために、キャリアのプラスになるようなファーストステップを踏みたいという、文字通りの「就職」になってきています。主役が「企業」から「個人」に変わったとも言えます。

つまり、「企業」と「個人」のパワーバランスが変化し「個人」の力が強くなってきているのです。この傾向はこれから強まっていくでしょう。

近未来では相対的にさらに「個人」の力が強まることを踏まえ、就活生のみなさんは個として自立できるように準備してく必要があることを十分理解しておいてください。(43ページ)

「個人力」の時代

では、そんな時代の「個人」はどう生きていけばいいのでしょうか。林さんはそのヒントとして、元日本マイクロソフト業務執行役員の澤円(さわまどか)氏の著書『個人力 やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント社)から以下のような主旨の言葉を引いています。

・「『個人力』とは、『ありたい自分』のまま人生を楽しんで生きていく力だ」
・「これからますます『個』として何ができ、何を選ぶのかが問われるようになる」
・「『わたしはこうありたい』と自分自身を定義し、あたりまえを疑い、常に自分自身をアップデートさせながら、多様な価値観を持つ人々と協働していくことが求められる」

自立した「個人」が主体的に生き方や働き方を選び取っていく。その選択次第で未来は大きく変わっていく──そんな時代になると林さんは言います。

「未来の働き方」とは?

以上のような企業と個人の関係性の変化によって、働き方はどのように変わっていくのでしょうか。林さんは、厚生労働省の「働き方の未来2035」という報告書を参照しながら次のように指摘します。

・個人が自分の意思で働く場所と時間を選べるようになる。そのため「労働時間」ではなく「成果」によって評価され、報酬が決められる。
・誰かを働かせる、誰かに働かされるという関係がなくなり、自立した個人が自律的に多様なスタイルで働くことが求められるようになる。
・企業は目的が明確なプロジェクトの集合体となり、プロジェクトごとに従事する人も変わる。したがって企業組織が人を抱え込む「正社員」のようなスタイルは変化していく。

「パラレルキャリア」や「副業解禁」といったワードが示すように、すでにこのような変化の兆候は現れています。企業は、人材を縛りつけておくことができなくなってきているとも言えるでしょう。

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