はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
現在、投資用のマンションを7軒所有しています。しかし、毎年100万円程度の赤字が出ています。現在の資産、収支状況を踏まえて、今後のライフプランをどのようにすればよいのか最近悩んでいます。アドバイスをいただけますでしょうか?
(50代後半 既婚・子供2人 男性)
内藤: ご相談ありがとうございます。赤字ということは、投資用のマンションのインカム収入(家賃)よりも、ローンの支払い、税金、経費などの支出が多いという状態になっているわけですね。
7軒の合計ということですので、まずはそれぞれの物件ごとの収益状況を確認してみましょう。そして赤字の物件については、フローの収支を確認します。
収支状況から3つに分類して考える
たとえば、空室でインカムがゼロになっている物件の場合、家賃設定が適切なのかどうかを確認する必要があります。また、付帯設備などを見直し、必要であれば追加の投資も検討すべきでしょう。
さらにテナント付けを依頼している管理会社のサービスについても再度確認すべきです。やる気のない管理会社に依頼しても、よいテナントを見つけてくれないからです。
個別の物件の収支状況から、以下の3つに分類して考えます。
- 家賃を下げるなどの「価格調整」が必要な物件
2. ウォシュレット、防犯カメラなど「追加投資」で対応できる物件
3. 管理会社の変更など「オペレーション」を変えるべき物件
それぞれに合った対応方法を見つけて、迅速に対応しましょう。
収益性から保有か売却を検討
次に、ストックとしての価値をチェックします。
それぞれの物件の時価を専門の業者に査定してもらいましょう。それをベースに、今後の家賃や空室率と物件価格の予測を行い、保有すべきか、売却すべきかを考えていきます。
あくまで予測ですから、思った通りにならない可能性もありますが、想定賃料と物件の価格から計算した収益性が低い、あるいは収益性の割に空室率の可能性が高いと判断したら、売却して別の物件に入れ替えることを検討すべきでしょう。
不動産の売却に関しては、個人の場合、5年以内で行うと税率が高くなりますので、税制面も考慮したうえで最終判断を行います。
投資エリアを分散しリスクを下げる
日本国内の賃貸物件の空室率は20%近くまで上昇しており、今後は人口減少によってさらにその割合が高まることが予想されます。
一部の優良エリアにある物件以外は空室リスクが一層高まったり、需要の減少によって家賃の下落リスクが高くなることが予想されるでしょう。
不動産投資は安定したインカム収入を狙うための投資です。空室リスクや家賃の下落リスクを抱えたままでの不動産賃貸経営では、本来の投資の目的を実現できなくなってしまいます。
また、投資エリアの分散によってリスクを下げる工夫のひとつとしては海外不動産があります。
日本の不動産に投資してきた個人投資家の一部には、日本だけではなく、海外の不動産に資産を分散させる動きがみられます。為替リスクといった国内の不動産にはない新たな検討事項もありますが、リスク分散の観点から検討される価値はあると思います。