はじめに
ハイテク株の割高感は後退
5月初旬の相場調整局面では、とりわけ、ハイテク・グロース株を中心としたナスダック総合指数が影響を受けました。ナスダックといえば、コロナショック後の未曾有の金融緩和と社会のデジタル化進展期待のもとで、相場上昇の牽引役を担ってきた市場です。
しかし、4月26日に高値を付けたあとは、同指数の不安定な値動きが目立っています。新型コロナのワクチン登場により、経済正常化への道筋が見えてきたことで、ハイテク主導の相場のトレンドに、区切りが付けられるとの見方も浮上しているようです。ただ、そうした議論に結論を出すのは、時期尚早の気がしています。
ナスダック総合指数の12ヶ月先予想PERは5月24日時点でおよそ30倍となっています。コロナ前の水準と比べれば依然として高いのですが、過去1年間に30倍を割り込むことがほとんどなかったことを考えると、バリュエーションの調整は一定レベル進んでいるように見えます。
一般的に予想PERは実質金利の動きに反比例し、実質金利が下がると予想PERは上昇する傾向にあります。しかし、最近では実質金利が下がる中でも予想PERは低下しました。いわば、投資家の警戒感の高まりを前に、必要以上に予想PERが低下したイメージです。
このことは、それだけ市場でのインフレ懸念が根強いことを意味しているのかもしれませんが、逆に言えば、この先、インフレ加速の見方が後退していくにつれて、予想PERは反転に向かう可能性があることを示唆しています。
予想PERのような株式のバリュエーションの調整が進んだとしても、その背後にあるものが業績不安ということであれば、必ずしも予想PERの低下を歓迎できないわけですが、今のところ米ハイテク企業の業績拡大シナリオは崩れていません。
2020年のコロナ下でも二桁成長を遂げた同セクターは、21年はもちろんのこと、22年にかけても良好な業績の推移が想定されています。コロナ前後の3ヶ年(2020年~2022年)すべてで増益見込みのセクターの中で、もっとも成長性の高いセクターとの位置付けです。
引き続き、物価統計の発表などに一喜一憂する展開が予想されるものの、中長期の成長性から判断されるハイテク・セクターの有望性には揺るぎないものがあります。短期的な株価の変動性に振り回されるばかりではなく、将来性に着目した投資の視点も必要です。