はじめに
家を購入する?賃貸でいく?
シングルの住まいを考えた場合、実家暮らし、マンション購入、賃貸(一人暮らし、友人とシェアなど)など、さまざまな選択肢があります。
とはいえ、将来を考えると、家を購入するのが良いのか、賃貸の方が良いのか悩む人は多いのではないでしょうか。
家の購入と賃貸については、昔からよく議論されるところですが、実際のところ、(1)これから先、何年生きるかがわからない(2)将来の住宅価格がどう動くかがわからない(3)マイホームに対しての価値観が人によって異なるのでどちらがお得なのかは、一概にはいえません。大切なのは、それぞれのメリット・デメリットを把握した上で、自分のライフプランに合わせて選択することです。
例えば、賃貸の場合は、ライフスタイルに応じて住むエリアや間取りを臨機応変に変えることができるのがメリットですが、家賃を1人で支払うとなると、相対的にコンパクトな部屋に住まなくてはならなかったり、家賃をずっと支払い続けたりすることになります。また、家賃を数人で負担して広い家で暮らすシェアハウスも魅力ですが、生活を共にしても良いと思える友人を作るための努力が必要です。
一方、持ち家の場合は、自分の資産になったり、ローンを払い終われば住居費がかからなかったりするところがメリット。ただし、マイホームを購入する時には、住み心地など自分の満足度を追求することももちろん大切ですが、物件の資産価値をチェックすることが重要です。終の棲家にするつもりでも、突然のリストラや海外へ移住、老人ホームへの入居など、ライフスタイルの変化で手放す可能性がないとは言えません。家を購入する時には、いざ、住み替えるといった時に、「売れるか」「貸せるか」といった出口を考えて買うことが大切です。
長生きに備えて、老後・介護費用は念入りに準備!
ひとりで生きるとなると、最も心配になるのは「老後」や「介護」のことでしょう。
一昨年前に金融庁のワーキンググループが出した報告書「老後2000万円問題」が話題になりましたね。総務省の家計調査報告(2019年)によると、現在の高齢無職世帯が受給している年金額はシングル世帯で約15万2,000円(ずっと正社員で働いていた場合)。この収入に対して、支出はどうなっているかというと、シングル世帯で毎月約2万7,000円の赤字がでているという結果に。日本人の女性は世界の中でも長生きで、平均寿命は87.32歳となっています。ただし、女性は、ますます長生きの傾向にあるので、95歳までは生きると考えて資金を見積もっておくと安心でしょう。
今後は働き方も大きく変わってくると思いますが、仮に65歳で定年退職を迎え、95歳まで生きると仮定すると、
公的年金だけでは足りない金額2万7,000円×12ヶ月×30年間=972万円
ただし、上記のデータは、衣食住の基本生活費、かつ持ち家を前提としたデータです。ですから、賃貸暮らしだったり、おばあちゃんになってもエステに行ったり、友達とおいしい物を食べたり、旅行に行ったりしたいとなると、もっとお金が必要です。
また、高齢になると、介護が必要になる可能性が高まってきます。今や85歳以上の高齢者の約6割が要支援、要介護状態。2人に1人以上は介護が必要です。
例えば、在宅で介護を受けるという場合、訪問介護やデイサービス、福祉用具などの介護保険サービスの利用にかかる費用と医療費やおむつ代などの介護サービス以外の費用があります。かかる費用は要介護度や介護期間により異なりますが、公益財団法人生命保険文化センター(2017年)のデータを参考に見てみましょう。
在宅の場合、住宅改修や介護用ベッドの購入にかかった一時的な費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、69万円、月々の費用(自己負担分)は、7万8,000円、介護期間は54.5ヶ月(4年7か月)となっています。単純に計算すると、494万1,000円。約500万円かかることになります。
また、シングルで重度の介護状態になってしまった場合には、自分では何もできないため、老人ホームに入るという選択をする必要がでてきます。一口に老人ホームといっても、地方公共団体や社会福祉法人が運営する「公的老人ホーム」と民間企業が運営する「民間老人ホーム」があり、どちらに入居するのかによって費用も全く違います。一般的には、公的老人ホームは費用が安いので人気がありなかなか入居できません。民間老人ホームに入るとなると、入居時の一時金の費用として500万円~1,000万円、月額の費用は毎月25万円~30万円程度かかります。
さらに、認知症になってしまった場合には、財産を誰に任せるか、自分の死んだ後の整理をどうするかなどの問題が発生します。今回は、詳細は省きますが、シングルの場合は特に、認知症になってしまった場合の対策についても考えておく必要があります。