はじめに

規制・金融の双方から企業へ対応を迫る動き

こうした国際的な取り組みと並行し、足元では生物多様性を巡る新たな潮流が生まれつつあります。

一つは、欧州連合(EU)を中心とした新規制導入の動きです。EUでは、企業に対しバリューチェーンに関する人権・環境デューデリジェンスの実施を義務付ける新たな法規制が、導入に向けて検討されています。

また、事業活動が持続可能かどうかを分類する「EUタクソノミー」においても、生物多様性に関する環境目的の基準策定に向けた取り組みが進められています。

もう一つが、金融機関による取り組み強化の動きです。昨年9月、大手金融機関などは、生物多様性に関する協力、関与、自社の生物多様性への影響評価、目標設定、報告を2024年までに行うことをコミットする「生物多様性のための金融の公約(Finance for Biodiversity Pledge)」を立ち上げました。

こうした生物多様性の保全を目的としたイニシアチブ発足の動き以外にも、企業に対し生物多様性への対応や開示を求める金融機関は増加傾向にあります。

情報開示フレームワークの整備の動き

一方、企業の生物多様性に関する情報開示の枠組みも、整備に向けた動きが着々と進んでいます。その中で最も注目すべき動きとして、「自然関連財務開示タスクフォース(TNFD)」の取り組みが挙げられます。

TNFDは、国連開発計画(UNDP)などが主導するタスクフォースで、自然に好影響を及ぼす世界の資金の流れを後押しするべく、企業や金融機関が自然への依存性や影響を評価、管理、報告するためのフレームワークを提供することを目的に掲げています。

また、TNFDの取り組みは気候変動分野における「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の活動を参考としています。既に金融機関や規制当局などが参加する非公式のワーキンググループが、昨年よりフレームワーク策定に向けた作業を開始し、2023年までにフレームワークを策定、公表する見通しです。

気候変動関連の情報開示において、TCFDが策定したフレームワークが企業の開示を大きく後押ししたこと踏まえると、TNFDが策定するフレームワークも、将来的に企業の生物多様性に関する開示を大きく進展させる可能性があります。

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