はじめに

「健康経営優良法人」の見える化

健康経営に取り組む優良法人の「見える化」は急速に進展しています。

経済産業省と東京証券取引所は、上場会社の中から「健康経営」に優れた企業を選定し、「健康経営銘柄」としてESG投資家に魅力ある企業として紹介し、「健康経営優良法人認定制度」も設定しています。「健康経営銘柄2021」に選ばれた48社は、記事の最後でご紹介しましょう。

企業向けには2020年6月、「健康投資管理会計ガイドライン」が策定されました。管理会計の手法により、活動の費用と効果を認識するために、可能な限り量的・金銭的指標を用いて「見える化」する仕組みです。「健康経営度調査2021」では回答企業全体の65.6%が同ガイドラインを認知していると回答、健康投資管理会計の利活用に意欲を示しました。

さらに2021年5月、経産省は「健康経営銘柄2021」の評価サマリーをHP上で公開。企業等が健康経営に関する情報を積極的に発信するきっかけを作り、投資家による活用促進を目的としています。

中期的に持続可能な企業価値を追い求めるESG投資には、情報公開が重要です。定量化しにくい「S(社会)」の一指標である健康経営の見える化は、一つの判断材料として有効活用されるでしょう。

1ドルの投資で3ドルのリターン

今後、上場企業は、従業員の健康をより意識した経営を行っていく見通しです。今年6月に3年ぶりに改訂される「コーポレートガバナンス・コード」の原則2-3には、新たに「上場会社は、社会・環境問題を始めとするサステイナビリティを巡る課題について、適切な対応を行うべきである」と記述されました。社会・環境課題には、気候変動や人権などと共に、「従業員の健康・労働環境への配慮」も含まれています。

企業が健康経営を取り入れるメリットに、健康投資のリターンが大きいことがあげられます。米ジョンソン・エンド・ジョンソンが世界250社・約11万4,000人に健康教育プログラムを提供し、投資に対するリターンを換算する調査を行ったところ、1ドルの投資に対して3ドルの投資リターンが得られることが報告されました。

投資リターンとしては、生産性の向上や医療コストの削減、企業ブランド・イメージの向上による人材獲得効果などが注目されます。

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