はじめに

東南アジアでは、直近マレーシアやフィリピンでの新型コロナウイルス感染拡大が顕著で、景気の先行き不安につながっています。

人口大国であるインドネシアでは、6月9日に7,725人の新型コロナウイルス感染者数が確認されました。7千人超となったのは、3月4日以来約3ヶ月ぶりで、累計感染者数は187万7,050人に達しました。

今年年初あたりまでは、感染封じ込めに成功しているコロナの優等生とみられていたベトナムでも、感染者数が急増、工業団地の一部が停止に追い込まれるなど、経済全体に影響が拡がっています。

いずれの国においても、コロナ禍問題の影響が景気の先行き見通しを悪化させていますが、そのような状況の中でここ数ヵ月目立った動きとなっているのが、インドネシアの新興企業の動きです。今回は、評価額が10億ドルを超えるようなユニコーン企業も出始めているインドネシアの新興企業の動向を探ってみたいと思います。


インドネシアで注目集まる大型ユニコーン企業

もともと東南アジアでは、インターネットの普及、デジタル経済の進展スピードが速いという傾向があり、多くの新しい技術が普及してきました。なかでもインドネシアはその傾向が顕著です。東南アジア最大の人口を擁しており、かつ、国土が島国で地理的に離れていることなども新興企業が育ちやすかった要因であったといえます。

近年目立つのは、フィンテック、ライドシェア、Eコマース、電子決済など、比較的先進的な技術を必要とする分野です。インドネシアのライドシェアの分野では、これまでゴジェックとグラブ(グラブ社は厳密にはシンガポール本社の企業)のシェア争いが顕著でした。現在はこの2社を含めて、いくつかの分野で巨大なユニコーン企業が育っています。具体的な企業名を挙げれば、Eコマースのトコペディア、オンライン旅行サイトのトラベロカ、Eコマースのブカラパック、電子決済のOVOなどです。まさに、新興企業大国であるといえるでしょう。

そのなかで、ここ数ヶ月はIPO絡みの報道が目立っています。2021年1月にはグラブが、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて米国市場への上場を検討すると発表しました。実現すれば、東南アジア企業としては過去最大規模の海外上場となる可能性があります。少なくとも20億ドルを調達することになると試算されており、上場時期は年内が予定されています。

なお、このグラブ社には、ソフトバンクG傘下のテクノロジーファンド「ビジョンファンド」なども出資しており、上場が決まれば日本企業にも、様々な影響が出てきそうです。
ゴジェック、グラブの待機中のバイク(インドネシア)出所:アイザワ証券撮影

さらに、グラブだけではありません。グラブのライバルであるゴジェックにもIPO計画が出てきました。具体的にはトコペディアと合併について協議しており、合併後の新会社は米国とインドネシアでのIPOを検討している、という計画が報じられました。今夏にも統合合意にこぎつけ、米国とインドネシアでの株式公開を目指す意向です。トコペディアは、IPO計画を加速させるために、米モルガンスタンレーとシティグループをアドバイザーに起用したと発表しました。この動きを見る限り、上場話はかなり進展していると思われます。

また、トコペディアには、ソフトバンクグループ、中国のアリババ・グループ、シンガポールの政府系投資会社であるテマセクホールディングスなどの世界的な企業が出資しています。グラブ社と同じく、世界的に注目度の高いIPO案件になりそうです。

<写真:ロイター/アフロ>