はじめに
グーグルはアマゾンを脅かすか?
アメリカではあらゆる消費関連企業がアマゾンの成長によって負の影響を受ける、“アマゾン・エフェクト”が問題になっています。
脅威であるアマゾン・ホールフーズ連合に対して、どこが有効な手を売ってくるのかが注目されていたわけです。
そして、そこに登場したのが全米最大のウォルマートとグーグルが手を組むという、思わぬ強豪連合だったのです。
実際にグーグル連合はアマゾンの強力なライバルになるのでしょうか? 実はここには、おもしろい両陣営の違いがあります。
アマゾンは全米最大のECサイトですが、同社が運営するスーパーマーケット型の通販サービス「アマゾンフレッシュ」の主要ユーザーは主に富裕層に偏っています。
というのも、アマゾンフレッシュを利用するためには月会費を14.99ドル(約1,600円)払わなければならず、1度の注文が50ドル(約5,500円)以上必要という条件があります。そのため一般顧客にはハードルが高すぎるのです。
アマゾンがホールフーズを買収した理由もここにあり、主に有機野菜や高級食材を販売する富裕層のためのスーパー、ホールフーズとの相性はバッチリなのです。
それに対し、グーグルはウォルマートと組んだところに興味深いポイントがあります。
ボリュームゾーンを狙ったグーグル
実は、グーグルはアメリカでは中・低所得者層を主な顧客としています。スマホでいうと、iPhoneが富裕層、Android携帯は中・低所得者層と主な利用者が分かれているのです。
そしてウォルマートの利用者もまさに全米の中・低所得者層と、両社の顧客層はぴったり合っています。
ただ、音声スピーカーが普及したとしても、「グーグル・エクスプレス」がこの中・低所得層を切り拓くことは、そう簡単ではありません。
これまで無料配送サービスにあたっては年間95ドル(約1万円)の年会費が必要で、これがユーザー拡大の重石になっていました。グーグルは年会費を廃止し、一定額以上の注文をすれば誰もが使えるようにルールを変更する予定ですが、それでも配送料がボトルネックになります。
そこでよいパートナーとなるのが、ウォルマートです。
考えてみれば“コロンブスの卵”ですが、中・低所得者層のユーザーは週に1度はウォルマートを訪問します。日本人がコンビニに行くのと同じように、必ず顔を出すのです。今、ウォルマートの通販は「お店で受け取れば送料無料」というサービスで成長しています。
これらを踏まえて考えると、思いついた時にスピーカーに向かって注文し、週末ウォルマートに出かけてそれをピックアップするという買い物スタイルは、とても便利な新習慣になる可能性が高いわけです。
アメリカの人口と所得分布を考えると、金額面では富裕層の消費額が大きいですが、人口の絶対量から中・低所得者層の購買力は巨大です。
つまり、前提条件からいうと、グーグル・ウォルマート連合は十分にアマゾンの対抗勢力になりそうなのです。
というわけでこの勝負、どちらに転がるのか目が離せません。