はじめに

マイナンバーカードが一部医療機関で健康保険証として使えるようになりました。さらに今後、スマートフォンへの搭載、運転免許証との一体化などが予定されており、活用領域が広がっています。利便性が高まる一方、個人情報の漏えいなどを懸念する声も根強く、企業も収集したマイナンバーのより厳格な管理が求められます。


メリットがない?マイナンバーカード

毎年2月から3月にかけては、確定申告の時期です。2020年分を申告する今年は、「青色申告特別控除額」が改訂されました。従来と同じ65万円の控除を受けるにはe-TAXによる申告(電子申告)または電子帳簿保存が条件なので、今回初めてe-TAXで申告した、という人は多いでしょう。

e-TAXというと、マイナンバーカードとICカードリーダーが必要と考えがちですが、これは誤解です。マイナンバーカードを使う「マイナンバーカード方式」に加え、税務署から発行される利用者識別番号で電子申告する「ID・パスワード方式」も選べます。

こうした誤解は、マイナンバーカードの普及率が低いことと、「マイナンバー(個人番号)」(「通知カード」に記載された12桁の数字)と「マイナンバーカード」(マイナンバーや顔写真が印刷され、本人確認用の電子証明書機能が搭載されたICチップ付きカード)の混同などが主な原因と考えられます。

マイナンバーカードを取得するには、交付申請のうえ、わざわざ自治体窓口へ出向いて受け取らなければなりません。手続きに手間がかかる一方、カード所有で得られるメリットは多くありません。せいぜい、コンビニで住民票や印鑑登録証明書などの交付が受けられる程度です。多くの人が日常的に活用できる環境が広まらない限り、マイナンバーカードを持つ動機は生まれにくいでしょう。

その点は政府も認識しているはずです。その対策として、マイナンバーカードをさまざまな用途に使えるよう、具体的な取り組みが始まっています。

マイナンバーカードが健康保険証に、3月から

まず、一部医療機関でマイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになりました(厚生労働省マイナポータル)。3月下旬から本格運用が開始される予定です。

マイナンバーカード保険証化のメリット

マイナンバーカードを健康保険証として使うメリットは、いくつかあります。

まず、転職による健康保険組合の変更、引っ越しによる住所変更などの場合でも、新しい健康保険証の発行を待つ必要がありません。保険証がない状態で実費診療を受け、自治体の窓口で後日払い戻してもらう、という煩わしさがなくなります。

また、受診や処方薬の情報が記録され、マイナポータルから確認可能になる結果、確定申告の医療費控除が省力化されそうです。この記録を「お薬手帳」として活用し、旅行先や被災時などでも安心して医療が受けられます。

さらに、医師や薬剤師などに健診や薬剤の情報を開示できて、健康管理に役立つでしょう。2022年夏ごろには、手術や移植、透析といった情報も対象になる予定です。厚労省は、電子処方箋の機能も持たせるとしています。

事務手続きの面では、高齢受給者証や限度額適用認定証などの書類を窓口へ持参する必要もなくすそうです。

保険証利用の手続き

マイナンバーカードを健康保険証として使うには、事前登録が必要。PCとICカードリーダー、またはマイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンを使えば、「マイナポータル」上で済ませられます。

登録しておくと、病院や調剤薬局で、マイナンバーカードだけで保険診療などが受けられるようになります。病院での手続き手順は以下のとおりです。

病院や薬局を利用する際、窓口の専用カードリーダーにマイナンバーカードを置き、ICチップ内の情報を読み取らせます

「顔認証付きカードリーダー」の場合は、カードリーダーのカメラで捉えた顔画像とICチップ内の顔写真データが比較され、本人確認されます。マイナンバーカードの持ち主が4桁の暗証番号を入力する確認方法もあります

「汎用カードリーダー」の場合は、4桁の暗証番号入力で本人確認されます

健康保険証のように窓口へ預ける必要はありません。

注意点は?

マイナンバーカードの健康保険証化には、注意しなければならない点もいくつかあります。

まず3月から利用可能になるものの、すべての病院と薬局が対応するわけではありません。非対応の病院などでは、引き続き健康保険証の提示が求められます。厚労省の目標だと、ほぼすべての医療機関が対応するのは2023年3月末です。

またマイナンバーカードと健康保険証の一体化でないため、健康保険の手続きは別途行う必要があります。加入や脱退などの届け出は、マイナンバーカードの健康保険証化とは別に今後も必要です。

マイナンバーカードの健康保険証機能は、マイナポータルのFAQページに詳しい情報が掲載されています。対象にならない人、利用登録ができない環境などの制約もあるので、一度目を通すとよさそうです。

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