はじめに

労働時間管理は「法的に問題なし」の取組みだけでは済まない

働き方改革関連法が成立した2018年6月あたりから、長時間労働の抑制が社会的価値観として広く浸透してきました。

労働時間についての法律については、大きく変わったわけではありません。時間外労働をさせるための協定(いわいる36協定)で定める「残業させることができる時間」について上限が設けられたり、違反に罰則がつくようにはなりましたが、それとて、36協定を締結すればいまだ1か月100時間未満の範囲で長時間の残業や休日労働をさせることができます。

しかし、世の中の空気感は圧倒的に変わりました。たとえ、法的には問題ないとしても、経営者が残業の抑制に関心がないことが知られてしまうと、その企業の姿勢が従業員や世間から評価されなくなってしまったのです。

ある人が「経営に一番大事なのは心理学である」ということを言っていました。まさにそのとおりだと思いました。

「法律的に正しい・正しくない」という視点も重要ですが、経営者の発言、企業の姿勢や方針が人の心理にどう影響を与えるのかを読み取り、そのために何をするのかが大事な時代になってきたのです。

企業への評価に直結する多様な働き方への対応

働く人のニーズは多様化しています。その多様性を汲み取り、柔軟に対応できるか否かが、企業を評価する際の分かれ目になりそうです。

少し前までは、働き方でいえば育児をする従業員への配慮が大部分でした。しかし、最近では育児のほか、介護の問題、治療と仕事の両立、副業・兼業のニーズ、短時間勤務のニーズ、勤務地を限定したいニーズなど、配慮すべき点が増えています。

従業員側のニーズを企業側がどう捉え、どんな方針を打ち立てるのか、対応するもの・しないものをどう線引きするのか──。これらを明確にする必要があります。一連の対応を従業員が見ているのです。

結果として、従業員のほうを向いてニーズを汲み取ろうとしている企業に人が集まり、優秀な人材を選びやすくなります。