はじめに

ついに日銀も動きだした

政府が気候変動分野へ大きく政策の舵を切る中、中央銀行も気候変動への対応強化に踏み切りました。

日本銀行は、6月の金融政策決定会合において、「気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを支援するため、金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給の仕組みを導入する」と表明し、続く7月会合で新たな仕組み(以下、気候変動オペ)の骨子案を示しました。

この気候変動オペを通じて、日銀は日本の気候変動に資する投融資を行う金融機関に対し、0%の貸付利率で貸し付けを行います。また、このオペを利用する金融機関の日銀当座預金にかかる金利が0%となる部分を拡大することで、利用を促す仕組みです。さらに日銀は気候変動に関する取り組み方針を併せて公表し、シナリオ分析に基づく気候関連金融リスクの定量的な把握など気候変動対応強化に向けた一連の施策を示しました。

今回の気候変動オペの詳細な制度設計については今後日銀内で検討が進められていく見通しですが、企業の資金調達におけるグリーンファイナンスの活用を活発化させる契機となりうる可能性があります。

企業は気候変動対応のリスクとチャンスを見極めよ

このように日本においてもエネルギー政策、財政政策、そして金融政策における気候変動対応の戦略が徐々に具体化しつつあります。こうした中、脱炭素社会への移行期において企業が高成長を遂げていくためには、気候変動のリスクと機会の両面を適切に捉えていくことがより重要になります。

リスクの観点からは、今回示されたエネルギー基本計画の原案と整合させるよう民間の省エネを推進するために、将来的に日本でも欧州並みの強力なカーボンプライシング政策が講じられる可能性が想定されます。その場合、事業活動の脱炭素化対応が不十分な企業にとっては収益悪化のリスクとなります。

一方、機会の観点からは上述のグリーン成長戦略で示された重点分野については、今後も一段の政策支援がなされる可能性が考えられます。また、日銀の気候変動対応の強化が資金の流れをシフトさせる契機となり、気候変動問題に積極的に取り組む企業へより資金が流入しやすい環境が急速に整備されていく可能性も想定されます。

気候変動への対応状況が企業の収益に及ぼすインパクトが今後一段と増大していく可能性には留意が必要です。

<文:エコノミスト 枝村嘉仁>

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